極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
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ロシアの歌をロシア語で歌いましょう!その3

はこだてベリョースカクラブ

一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第3回目の講話内容です。
テーマ:ロシアの歌をロシア語で歌いましょう!その3
講 師:鳥飼 やよい(准教授)

 2018年「ロシアの春の歌を、歌い踊りましょう!」、 2019年「『モスクワ郊外の夕べ』の歴史を学んで、ロシア語で歌ってみましょう!」に引き続き、3回目の「ロシアの歌を歌いましょう」です!

今回は中秋の名月にちなみ、『月あかり(Динь-динь-диньディンディンディン)』を歌いました。春浅い月明かりの雪道を駆け抜けるトロイカは、私たち日本人が想像するロシアのロマンチックな情景の一つではないでしょうか。エフゲニー・ユーリエフ(1882-1911)の作詞作曲による『月あかり』はその情景を描き、20世紀初頭ロシアきっての歌姫アナスタシア・ヴィアルツェヴァが歌ったことで大人気を博しました。
その人気のあまりか、ロシア帝政の崩壊を招いたとされるラスプーチンの反対勢力による暗殺が行われた晩、その現場でその物音をかき消すためにヴィアルツェヴァの録音になる『月あかり』が蓄音機から大音量で流れていた、との説もあります。
この歌はいわゆるロマンスです。民衆に古くから親しまれていた作者不詳の「民謡」と異なり、「ロマンス」には作者があり、またより芸術的な歌曲であるとされます。また、この歌は「馭者もの」というジャンルにも属します。これは古くから広大な大地を物資や人をトロイカで縦横に運んだ馭者たちにまつわる一連の歌であり、ロシア独特のジャンルでもあります。日本でも『トロイカ』等が有名です。
歌詞では愛を語り合う男女、その頭上に鳴るトロイカの鈴の音(「ディンディンディン」)、その鈴の音に娘の若やいだ声が重なる。すると、一転して賑やかな婚礼の場面となり、そこで挙げられる乾杯のグラスの音が鈴の音に重なります。そしてベールを被った娘の隣に立つのは自分ではなかった、というお話です。
今日の実践部分では様々な歌手による録音を聞きメロディーを把握した上で、カタカナ書きをしたロシア語でいきなり歌ってみました。メロディーが分かればロシア語を知らなくてもロシア語で歌える(感じがする)のです。その秘密は、ストレスのある太字部分を強く長く読むことです。例えば冒頭の「♪ブーンナエ、シーネ、スニェーク、セーレブーッツァ」は「ルー、ヤー、ニェー、リー」部分を。聞きながら何度か歌い余裕が出てくると周辺のカタカナも自然と言えるようになり、最終的にはロシア語で歌えているのです。本日の出席者の皆さんもいつのまにかロシア語で歌っていた、と喜んでくださいました。それはまた、歌のメロディーの魅力に負うところも大かもしれません。
ロシアには隠れた名曲がまだまだ沢山あります。是非また、皆様と共有できればと思います。

★日本人歌手:山之内重美さんの『月あかり』Youtube