学報 "МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

学報"МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

No.108 2021.07 "Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

いつか聖地で『カラマーゾフ』を ~私とロシア語の出会い~
函館錦識寺 僧侶 上田 隆弘

 私には夢があります。
 それはドストエフスキーの聖地スターラヤ・ルッサで『カラマーゾフの兄弟』を読むこと―ドストエフスキー作品の中で最も好きな作品をその聖地で読んでみたい。コロナ禍で身動きができなくなった今だからこそ、その思いがますます募るのを感じています。
 私がドストエフスキーに親しむきっかけとなったのは小林秀雄の『ドストエフスキイの生活』でした。この本に書かれていた次の文章に私は撃ち抜かれてしまったのです。
ストラアホフの語るところによれば、「ドストエフスキイは、決して巧者な旅行家ではなかった。自然も歴史的な記念碑も、最大の傑作はともかく、美術品さえ格別彼の気を引かなかった。彼の注意はすべて人間に向けられていた。街の一般生活の印象、人々の天性や性格に向けられていた。誰もやる様に、ガイドをつけて、名所見物に歩いたところで仕方がないじゃないか、と彼は熱心に僕に説いた。事実、僕等は何も見学しなかった」。青年時代から憧れていたフロオレンスに行っても、「旅行家のする様な事は何一つしなかった。街を散歩する外、僕等は読書に耽った。当時、ユウゴオの『レ・ミゼラブル』がでた許りで、ドストエフスキイは、毎巻つづけて買い、読み終ると僕に渡して、三四冊は一週間の滞在中に読んでしまった」。※1
 ドストエフスキーは普通の旅行者がするような見学ツアーには興味を示さず、若い頃からの憧れであったはずのヨーロッパに初めて来たというのにこんな具合だったとのこと。さらにはせっかく来た芸術の都フロオレンス(フェレンツェ)でも当時出たばかりの『レ・ミゼラブル』を読みふける始末・・・
 ドストエフスキーにとっては観光名所めぐりはもはや頭にありませんでした。彼にとっては街の印象や人々の生活、性格こそ興味をそそる対象だったのです。
 そして小林秀雄は続けてこう述べます。
彼の頭には、はやロンドンもパリもない。彼の思想は燃え上る。自由とは何か、同胞愛とは何か※2
 この飽くなき人間探究の姿勢に私は痺れたのでありました。
 というのも私は二〇一九年に宗教とは何かをテーマに八〇日間で一三カ国を巡る世界一周の旅に出ました。その旅はまさしくドストエフスキーがしたような旅だったのです。もちろん、私の旅でも有名な観光地や芸術もたくさん見てきましたが、それよりもその背景にある文化や歴史、人間そのものにこそ最も興味が引かれたのでありました。このドストエフスキーとの奇妙な共通点がきっかけで私はドストエフスキーをもっと知りたいと思うようになったのです。
 そして二〇二〇年の秋、私はドストエフスキーを学ぶ過程で彼が愛した『レ・ミゼラブル』を読むことになりました。ドストエフスキーが愛した『レ・ミゼラブル』―彼はどんな気持ちでこの作品を読んだのだろうか―そんな好奇心から手に取ったこの小説は私の想像のはるか上をいく面白さでした。そんな『レ・ミゼラブル』を読んでから改めてドストエフスキーに思いを馳せてみると、彼が初めてその本を読んだフロオレンスのことを思い浮かべてしまうのでありました。
 せっかく憧れの地フロオレンスに来たのに全く外出せずに読みふけるほどの熱中ぶり。そしてその後アンナ夫人とのヨーロッパ外遊中や、禁固刑の時にもこの作品を読んでいます。そのことからもドストエフスキーがいかにこの作品を愛していたかがうかがわれます。ドストエフスキーが念願のヨーロッパ旅行で読んだ『レ・ミゼラブル』はそれだけ彼の心に強い印象を残したのではないでしょうか。やはり旅の最中に読む本というのは何か特別な趣がありますよね。普段家で読むのとはまた違った感覚がそこにあるように感じます。
 私が初めて読んだドストエフスキー作品は『カラマーゾフの兄弟』でした。二十歳の冬でした。僧侶としてまだ駆け出しにも満たなかった私が大審問官の物語で彼の洗礼を受けてしまったのです。私の宗教観を揺さぶるような体験でした。その出会いがあったからこそ今こうしてドストエフスキーと繋がることができました。私にとって『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキーのバイブルです。そんな『カラマーゾフ』を彼が晩年を過ごし、そのモデルともなったスターラヤ・ルッサでぜひ読んでみたい。私にとって特別な本がもっと特別なものになるのではないかと私は思うのです。本で読んだものを現地で感じてみたい。現地で私は何を思い、何を感じるのだろうか。現地で読む『カラマーゾフ』は私に何を語りかけるのだろうか、今からわくわくしています。
「いつか聖地でカラマーゾフを」
それが私の夢です。
 その夢を実現させるためには、ぜひともロシア語が必要です。だからこそ私はロシア語を学ぼうと思ったのでした。私の生まれ故郷である函館にこんな素晴らしい学びの場があることの幸せを感じています。これはきっと運命に違いないと勝手に感じています(笑)これからも楽しくロシア語を学んでいきたいと思います。

※1 『ドストエフスキイの生活』小林秀雄 新潮社 平成24年35刷発行 122頁
※2 『ドストエフスキイの生活』小林秀雄 新潮社 平成24年35刷発行 123頁

△ロシア語市民講座上級コース受講中の上田さん

学生からの投稿 1年生特集 『本校に入学して』

ロシア語科 中村ヒューバー海

 入学式を終え、早くも3ヶ月が経ち気候も暖かくなると共に緑も出てきました。
 夏に近づくにつれて新たな元気を感じます。
 入学当初は上手く一人暮らしに慣れられず苦労していましが、家族友人からのアイドバイスをもらい、日々の生活も安定してきました。また、空席だった学務課長には教務・学生係の福尾瞳さんが昇格します。
 親元を離れて改めて実感したのはどれほど周りの人から支えてされているかです。
 また、効率的に学ぶためには、いかに健康的な生活が重要かも学びました。今まで学業から少し逃げてきた私にとってはとても重要な発見になりました。
 これからも自分のペースで学習に取り組み合理的に幅広く勉強していきたいと思います。
 ロシア語の習得に関しては、まだまだ単語暗記やテストでの結果など、満足してはいけないところですが、今はカタコトで理解度も浅いロシア語が、今後喋れるようになると考えるとワクワクします。
 これからの2年間はせっかく「知識の鍵」を貰ったので新しい学びへのチャレンジ精神を忘れず、失敗に負けずに学んでいきたいと思います。

ロシア語科 岡元 菜弥波

 この春に本校へ入学してから3ヶ月の月日が経ちました。今では、授業の様子や周りの環境にも慣れきたころです。
 函館が地元である私は、本校を以前から知ってはいましたが、まさか私自身が入学するとは思っていませんでした。
 しかし、もともと語学に興味があり、新たな言語を身につけたいという理由で入学を決めました。学習経験のなかった私にとってロシア語は未知の世界でした。授業では最初のうちは覚えることが多く、内容もスピーディーに進みます。ロシア人の先生方から直接学ぶロシア語は、新鮮で、貴重な時間です。独学では叶わない知識も増えます。
 授業では最初のうちは覚えることが多く、内容もスピーディーに進みます。ロシア人の先生方から直接学ぶロシア語は、新鮮で、貴重な時間です。独学では叶わない知識も増えます。
 毎日、数多くの単語を暗記するのに追われていますが、ちょっとずつ話せる語彙が増えると楽しく、嬉しいと感じられます。そして、毎日吸収するロシア語は自分にとって刺激があり、成長を感じる日々です。

ロシア地域学科 後藤 愛佳

 入学してから約3ヶ月が経ち、徐々に新たな場所での生活にも慣れてきました。新型コロナウイルスの影響もあり、放課後のロシアセンターでの自習ができなかったり、課外活動が中止になったりと制約の多い日々ではありますが、先生方や友達と関わることができる時間はとても貴重であると感じています。プレゼンテーションや口頭でのテストを行う実践的な科目もあり、自発的に授業に参加できる環境が整えられています。ロシア語の会話表現や文法など、授業で新しい知識を身につけられることがとても楽しいです。
 日々の授業で学んだ知識を糧に、いろいろな課外活動や学校行事に積極的に参加していきたいと思います。ロシア語をはじめとする様々なことを勉強できる恵まれた環境を与えられていることに感謝の気持ちを忘れず、4年間元気に学校生活を送りたいです。新型コロナウイルスの影響が収束し、感染拡大前の学校生活を送ることができるようになることを願っています。

ロシア地域学科 桑原 博暉

 時が経つのは早いもので、あっという間に7月になってしまいました。夢にまで見た独り暮らしに心躍らせていた3月の私と、まるで最初から独り暮らしだったかのように感じる現在の私。これが慣れというものでしょうか。少し物悲しいですね。
 函館での暮らしで驚いたことは、自転車に乗っている人をあまり見かけないことです。無くても生活できるのでしょうが、私はどんな短距離でも自転車を使いたいと考える人間なので、新鮮でした。自転車よりも車を使うことの方が多いのでしょうか。
 大学での少人数の授業は、とても自分に合っていると感じます。広い講堂で教授の講義を頬杖を突きながら遠目で見ているような授業形式ではなく、自らが授業に参加しているのでよく身についていると思います。ただ、授業の進むスピードが早いので、一課休んでしまうとかなり遅れてしまうという問題があります。何が何でも授業を休まない、確実に出ることの大切さが身に沁みます。

ロシア地域学科 松井 りの

 入学してから約3カ月。大きな問題もなく、課題をこなしながらなんとかやっています。
 はじめての一人暮らしということもあり、最初は家事などで手一杯でしたがようやく落ち着いてきました。仕事も家事もこなしていた母の凄さを改めて痛感しており、頭が上がりません。
 生活の面では、函館は観光地ということで普段使いできる店が少ないように感じていますが、大きな不便はありません。バスや市電など公共交通機関はしっかりしているので遠出もしやすいです。景色も良いので海辺を散歩したり坂の方に行ったりするのも良い気分転換になります。
 学習の面では、ロシア語は少し事前に習っていたこともあり、最初は楽できるかなー、なんて思っていたのですが、予想以上に苦戦しており、自分の未熟さを恥じるばかりです。日本人の先生に習っていた今までとは違い、生のロシア語を聴くことができるので発音はしっかりと学習できていると思います。授業中に自然にロシア語が耳に入る環境なのでだんだん聞き取りもできるようになってきました。授業のスピードが早く、その分覚えることも多く大変ですが毎日新しい発見や驚きがあるのでとても楽しいです。
 まだまだ始まったばかりで、不慣れなことも多いですがこれからも頑張ろうと思います。

ロシア地域学科 三田井 芙美

 本校に入学してもう三ヶ月経ちましたが、まだ慣れないことも多いです。
 授業は高校と違って、ノートに書く時間よりも音読する時間が長いことがあります。驚きです。読みと書きが同時に進むので、復習と暗記の日々なのです。入学前に少しだけでも勉強しておいてよかった、と何かにつけ感じます。進行のスピードが早いので、遅れないように頑張ろうと思います。
 しかし、先生方の教え方はとてもわかりやすく、また、1課ごとに小テストが実施されるので、理解が曖昧な点に気づくことができます。(通常時は)放課後にロシアセンターで自習できるのも、非常に助かります。
 生活については、自転車か車があれば、と思わされることがしばしばあります。徒歩か電車・バスでの移動だと、天気が悪いと外出するのが少しつらいからです。ただ、路面電車は観光地の方まで続いているようなので、時間があれば、観光も兼ねて行ってみるのもいいかもしれません。余裕がある時に、足を延ばしてみようと思います。
 ここでの勉強は本人のやる気に左右される部分が大きいです。無事卒業できるよう、これからも充実した毎日を送っていこうと思います。

ロシア地域学科 中村 百李

 本学へ入学して約3カ月が経ち、徐々にロシア語が慣れ始めてきたことを実感する度、とても嬉しくなります。毎日学校へ来て、新しい事を学ぶことができて幸せです。本当に充実した日々を送れていることに感謝したいです。
 私は「ロシア」という国については高校の授業などで触れてきてはいましたが、言葉に関しては全く知らずに過ごしていたので、本校に入学してからキリル文字の書き方、読み方などを初めて学びました。少人数で先生方と一対一で接せることができ、少しずつですがロシア語を自分の力として蓄えていけていると思います。
 中学生の頃から外国の言葉や文化に少々興味があり、進学に悩んでいたところ高校の校長先生から本校を紹介してもらいました。最初はあまり興味が出ず進学先では英語を勉強してみたいと思っていました。ですが、新しいことに挑戦しようと思う気持ちが心にありロシア語を本気で学んでみようと思い進学を決意しました。なぜ進学しようと思ったかというと、私はとても留学に憧れていたからです。実際にウラジオストクへ行き、学校で身に着けたロシア語を使って他国の留学生と交流し、知識理解を深めていきたいと思いました。
 そのためには地道にコツコツと努力を惜しまずロシア語を学んでいきたいなと強く感じました。勉強をするにつれレベルも格段に上がると思いますが何事も楽しんでロシア語をマスターしたいと思います。

ロシア地域学科 西田 崇人

 最初の1ヶ月は今までにないくらい長く感じました。高校でロシア語を勉強していなかったのでゼロからのスタートだったからです。見たこともない言葉が教科書に大量に書いてあり、そこで私は気づきました。入学前に少しやっておけばよかったと…。
 ロシア語のアルファベットは勉強していたのですが、単語などはほとんど覚えることなく入学式を迎えました。渡された教科書、テキストなどをパラパラとめくってみたら覚える言葉の多さに焦り、まだ春だったのに汗がでました。
 4月は宿題をやるのにも苦労しました。自分が思っていたよりも宿題が多く、小テストも多いことがわかり、高校の時に長時間やっていたゲームもやらなくなっていきました。埃をかぶったPlayStation4を見て、高校の時よりも勉強量が多くなったことに気付きました。しかし授業は自由で発言をしやすい環境だと感じています。これからもっと難しいロシア語の表現や単語が出てくると思いますが、諦めずに取り組んでいきたいと思います。

ロシア地域学科 佐藤 宏夢

 私は高校生の頃からロシア語を学んでいて、それもあって高校でロシア極東連邦総合大学函館校を紹介され、入学に至りました。
 私がこの学校に入学して変わったことは、自分で家事をしながら、学校の準備や宿題をしなければいけないことです。函館で一人暮らしをすることになった時、大きな戸惑いとワクワクの半々で、緊張を感じました。クラスは少数人であり授業態勢もわかりやすいから、すぐになじめました。しかし、日々の生活は一日一日がとても忙しく、大変です。家事にはあまり慣れません。そのため、勉強も効率よくしていきたいと感じています。
 学校生活については、私の大雑把な質問も先生方が親身になって答えてくれるので、とても助かります。それに何か課題や、やるべき事が残っていたら、放課後にロシアセンターという先生が常駐する教室で、友達と一緒に勉強をします。自習スペースがあるというのは、勉強がしやすいものです。
 学校は全日制の高校に似ているところもあり、時間のルーズさはあまり感じられることはありませんでした。しかし、私は早起きが苦手なので、これを改善して、慌てて登校することなく、もっとロシア語を学んでいきたいと思います。

ロシア地域学科 専徒 直葵

 私が本校に入学してから早くも三か月が経ちました。この短い間にさまざまなことがありましたが、学業や私生活はなんとか軌道に乗ってきました。
 クラスメイトも言っていましたが、本校に来てからは授業スピードの速さに驚愕しました。高校で3年間ロシア語を学んでいましたが、本校の授業のペースはすさまじく、これまで学習してきた範囲があっという間におわりました。入学前から授業の厳しさの話は何度も聞いていましたが、想像以上だったので若干の焦りまであります。しかし、先生方のわかりやすい講義や一年生の男子諸君の協力もあって、なんとかなっています。
 生活に関しては、はじめての一人暮らしということもあり、慣れないことを繰り返す日々が続いています。自炊や掃除などの家事をすべて自分でやることはとても大変で、面倒になって放棄しそうになることもありますが、それではあとから自分の首を絞めるだけだという気立てをもって自分を奮い立たせています。
 精神面でも特に問題なく快適に過ごせています。同級生はもちろんのこと、先輩方や先生方とも気兼ねなく話せる環境が本校にはあるので、とても心強いです。勉強は大変ですが、いろいろな人と協力して日々前進できたらよいと思います。