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山口ミルコ氏講演会「がん闘病→がん克服→再出発ロシアへの旅」を開催

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 2月11日(土・祝)に行われた「第19回はこだてロシアまつり」の中で、千葉県在住の作家・編集者、山口ミルコ氏をお招きして講演会を開催しました。

 函館日ロ親善協会と共催で行われ、当日は講演を聞くために、普段ロシアまつりには来たことのないお客様にも多くご来場いただくことができました。60名ほどの来場者を前に「出版編集の仕事」、「がん闘病」、「ロシア」と3つのキーワードからお話をいただきました。IMG_2088_R.JPG

 山口さんは函館にも縁のある作家・谷村志穂さんから、後に幻冬舎社長となる見城徹氏を紹介されて角川書店に入社、5年後に見城氏が独立すると同時に幻冬舎に移り、トータル20年にわたり編集者として第一線で活躍。五木寛之氏の「大河の一滴」など数々のベストセラーを手掛けます。

 2009年、すでに体調が悪かったこともあり、大好きだった会社を辞めることになります。退社と同時に乳がんであることが発覚、闘病生活に入ります。手術・抗がん剤・放射線と乳がん治療のフルセットを行い、3週間で髪の毛もすべて抜けてしまいます。しかし3週間で抜けたものは、また3週間で生えてくる、そして体の方が「何とかしなくてはいけない!」と危機を感じ、前よりも強い毛が生えてきたといいます(病気のことは闘病記『毛のない生活』(ミシマ社2012年)に詳しい)。

 会社を辞め、治療も終わると東京にいる必要がなくなり、千葉の実家に戻ります。お父様が大阪外国語大学(現在は大阪大学)でロシア語を勉強され、旧ソ連から木材を輸入する商社マンだったため、実家にはロシアやシベリアに関する本があふれていました。そして「ミルコ」という本名も、ロシア語の“мир=世界・平和”から名付けられたこともあり、父親のロシア土産に囲まれて育った子ども時代を思い出します。「そうだ、私はロシアだった!」。IMG_2095_R.JPG

 そこから山口さんのロシアへの旅が始まります。ロシア関連の書物に高級毛皮となる小動物・クロテンが多出していることを知り、抗がん剤で自らが毛を失った経験からも強い興味を持ちます。走るダイヤモンド、やわらかい金とも称され、莫大な富をもたらすクロテンを求め、帝政ロシアは東へ東と進出し、そのためにシベリアまで領土を広げたと言われています。山口さんはシベリアに追われ、絶滅の危機に瀕しているクロテンに会うため、日本人がほとんど訪れることのないハバロフスク地方の町・ビキンへ旅をし、それまでの様子をノンフィクション『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』(小学館2014年)にまとめます。

 病気発覚から8年経った最近、ようやく「がん克服」と言えるようになったそうで、その後もバイカル湖のオリホン島を取材するなど、現在も精力的に執筆活動をするほか、大学の非常勤講師として「編集の現場」の講義を担当しているそうです。病気を克服し、様々な興味を広げ、パワーあふれる活動をしている山口さんの姿は、多くの人々に勇気を与えることでしょう。

 この日は2冊の書籍販売とサイン会も行いました。また、「大学で編集を教える話や仕事と会社を考える本」と、「毛のない生活」の続編の出版が控えているそうで、そちらも今から楽しみです。
この講演には国際ソロプチミスト函館のご協力もいただきました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました。