No.38 2004.01"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

吟味と推敲

ロシア極東国立総合大学函館校 助教授 鳥飼 やよい

吟味
とある昼休み、A先生に「先生、日本には森がありますか?」と質問された。先生の質問はいつも唐突だ。そんな質問で皆を慌てさせておいて、大抵の場合、本人はすでに答えを知っている。A先生の質問の真意はおよそ「日本にはロシアで言うところの『лес』に当たる観念はあるか?」と了解した。
リェスですね?「鎮守の森」は神社裏の小さい林だし。竹林は森ではない。鬱蒼とした昼なお暗い森って見ないし。進一はいるけど、最近とみに森林も減ってきているし。ロシアの森はドイツの黒い森みたいに広大で、一歩足を踏み入れれば出て来られなくなりそうな、そして何か良いものも悪いものもその中に合わせ持っていそうな感じで、お伽話で「山に柴刈り、川に洗濯に」とは言うけれど、山道や竹林では何が起こっても、森で何かが起こる昔話は日本にはあまりないし。ひょっとして日本人にとっての「森」って「山」ですか?ヘンデルとグレーテルは親に森に捨てられたけど、日本では山に姥捨てに行くし。だとすれば露和翻訳における「森」の対訳は「山」か?
等々、種々様々な発言をさんざんばら呼び起こした挙句に、A先生は「ロシアの『森の精』は日本では『山の神』ですね」と断言した。しかし、「山の神」は日本語では「奥さん」のことである。もっと吟味の必要がありそうだ。(ここでは割愛するが、「精」と「神」の訳をめぐってもほぼ同量の唾が飛ばされた。)

推敲
またA先生である。ある学生がA先生の授業で提出した作文に「吟味と推敲」と赤ペンで書いて返された。聞けば大多数の学生が「推敲」の意味はおろか言葉さえ聞いたことがないという。昨今の中高では「推敲」といった言葉を作文や文学史の授業で教えないのか?(最近のワープロでは「白痴(ハクチ)」を漢字変換しようともしないし。)なぜ「推敲」はこんなに認知されていないのか?
小学校に遡る。国語の時間を思い出す。読書感想文、あるいは、あるがままの感動をそのままぶつけてこい!といわれた夏休みの作文。全体の5分の4を粗筋の説明に費やした挙句に最後のワンパラを「主人公は可哀想だと思いました」で終わる読書感想文や、「ド~ン」と言う花火の感動をぶつける作文には、推敲などいらない。そもそも一瞬の感動をいじくって何度も書き直すなど、感動が薄れるではないか。潔くないではないか。日本人は俳句を生み出したが、推敲の心情は薄かったのではないか。日本文学の輝かしき伝統は随筆である。随筆の定義が「心に浮かぶあれやこれやのことごとを、とりとめもなく書き記す」であれば、日本人の作文には推敲など必要あるわけもない。もともと「推敲」という言葉の語源は唐の国らしい。
ところが最近、推敲がスポットライトを浴びる機運が高まった。パソコンの普及である。ワープロでなら一発ファーストドラフトを書いておいて、あとで存分に何度でもカット・アンド・ペイストできる。いちいち巻紙をほどいて、書いて巻きなおしたりする必要もない。(ひょっとしたら昔の人は巻紙のせいで推敲しなかったのか?)一旦この面白さにはまれば、一発勝負の文章などは所詮偶然の産物に過ぎず、真の散文は偶然ではなく推敲の果てにある、ということにいずれ気づくことになる。学年論文や卒業論文を控えた皆さんも、推敲の面白さに早めに気づいて欲しい。

弁論大会

第9回ロシア語弁論大会・マースレニッツァ開催
2月13日(金)に函館校でロシア語弁論大会を開催します。参加希望の学生は1月30日(金)までに、出場申込用紙を事務局へ、露文および翻訳文をフロッピーまたはE-mail(dvgu@fesu.ac.jp)で実用ロシア語担当教員へ提出してください。
なお、弁論はロシア語学習歴250時間以上のAクラスと250時間未満のBクラスに分けて行います。
当日は弁論大会終了後、冬を追い出し春の訪れを喜ぶロシアの伝統的なお祭りであるマースレニッツァを開催する予定です。表彰式はこの中で行います。
また、マースレニッツァでの出し物も募集しています。
詳しくは事務局までお問合せください。

就職ガイダンス

早めの就職活動を
ロシア語科1年生とロシア地域学科3年生を対象に就職ガイダンスを行います。日時は1月22日(木)午後2時40分から、場所は第7教室です。最近の雇用動向や既卒者の就職状況、就職活動の進め方など就職活動についてのアドバイスを行う予定です。該当学生は、必ず出席するようにしてください。
なお、全体での「就職ガイダンス」終了後、個別の相談時間を設ける予定です。掲示の見落としのないようにしてください。また、就職に関わる求人情報は随時掲示をしておりますので、参考にするよう心がけてください。


特別セミナーのお知らせ
1月15日(木)、就職ガイダンスの一環として外部より講師をお招きし「特別セミナー」を実施します。
講師は、現在、みちのく銀行に勤務されている方で、大学でロシア語を学び、みちのく銀行に入行後モスクワ支店に勤務するなど、ロシアの現況、特に、ロシアの経済、金融に精通しております。
今後の就職活動の指針となる有益な情報を得ることができます。学生全員の出席を要望します。
開催日時:1月15日(木)午後2時40分から
講  師:みちのく銀行国道支店 十川聖代 氏
講話内容:「対ロシア金融ビジネスの現況と展望」

留学実習

パスポートは取得しましたか?
ウラジオストクへ留学するロシア語科1年生は1月16日(金)までに、承諾書・パスポートを事務局へ提出しなければなりません。
留学期間の延長は事前に校長の許可が必要ですから、延長を希望する学生は延長願を1月13日(火)までに提出してください。
第2回留学実習説明会を1月21日(水)午後2時40分から第5教室で行います。
海外旅行傷害保険の説明後、招待状とビザの申請用紙を記入します。手続きのために必要ですから、説明会には写真1枚(タテ4×ヨコ3cm)を必ず持参してください。

また、この日は実習期間中のリーダー
の選出、寮の部屋(一人部屋・二人部屋)の申し込みも行います。
説明会に出席できない場合は、事前に申し出てください。
なお、第3回説明会については後日掲示します。

日本育英会

返還手続き
平成16年3月に貸与期間が終了する奨学生を対象に、先日、奨学金返還説明会を行いましたが、返還誓約書・借用証書の提出期限は1月30日(金)です。期限までに忘れずに提出してください。

試験日程

卒業試験日程
ロシア地域学科の卒業見込者を対象として下記の日程で国家試験を行います。また、ロシア語科の卒業見込者も同期間に卒業試験を行います。
3月1日(月)~3月8日(月)
なお、ザチョット週間は2月23日(月)~2月27日(金)です。

後期試験日程
ザチョット週間:2月23日(月)~2月27日(金)
エグザメン日程:3月1日(月)~3月11日(木)
詳しい時間割は後日掲示します。

出席不足の学生は
本校では出席率80%以上が期末試験の受験資格になっています。出席率の低い学生が受験資格を得るには、担当教員の補習指導を受け、遅れを取り戻しておく必要があります。積極的に補習時間を活用するなどして最大限の努力をしてください。

卒業証書授与式

第9回卒業証書授与式を下記のとおり行います。
日時:3月12日(金)午前10時
場所:本校3階講堂
卒業予定者・在校生は全員出席してください。

入試日程

平成16年度の日程は
* 一般前期
 出願期間 (東京)1月23日まで
      (函館)1月30日まで
 試験日  (東京)1月31日
      (函館)2月 7日
 合格発表 (東京・函館とも) 2月 9日

* 一般後期 (函館のみ)
 出願期間   2月2日から3月26日まで
 試験日      3月31日
 合格発表     4月1日

短信

税関職員研修はじまる
1月13日から3月10日までの日程で税関職員ロシア語研修講座が行われます。一般的なロシア語のほか、税関ロシア語
ロシア経済・文化などを学び、研修期間中に行われる弁論大会にも出場します。
今回は函館税関5名と横浜税関1名の計6名の参加です。学生の皆さんは、普段はなかなか出来ない社会人の方々との交流をはかってください。

学生からの投稿

この学校に入学して ロシア語科1年 下山育子

私は高校生のときテレビでフィギュアスケートを見て、ロシアの選手のファンになりロシア語に興味を持ちました。
その後、大学で2年間ロシア語を学び、さらにロシア語学習を続けたかったので、今年の4月に本校に進学しました。
この学校では、ロシア人の先生が教えてくださるので、発音や正確な用語法、日本語からロシア語への翻訳といったことを学ぶ上で最適な環境だと思います。
また、先生方は、個性的で教養あふれ、しかも専門とする分野を持っていますので、ロシア語はもちろん文化史、文学史、地理、歴史、経済といったロシアに関するあらゆる内容を勉強することができます。残りあと1年と少しですが、この学校で多くのことを吸収し卒業したいと思っています。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
10~12月の主な活動実績

◆10月18日(土)~24日(金)
ウラジオストク市訪問(小笠原理事)
 大道寺小三郎顧問(みちのく銀行会長)が極東大学本学より名誉博士号を授与されたことから、みちのく銀行訪問団とともに同市を訪問し、本学開学104周年記念式典等に参加しました。

◆10月25日(土)
(財)北海道国際交流センター25周年
記念親善パーティー:松本専務理事出席。

◆10月27日(土)、11月21日(金)  極東大学本学からの6名の函館校留学に対し、歓迎・送別パーティーに倉崎会長が出席。

◆ 11月 8日(土)
はこだてロシアまつり講演会開催 
演題;「日ロ交流の現在と未来」
講師:在札幌ロシア連邦総領事館 
    領事参事官 リャボフ・オレグ氏

◆ 11月12日(水)理事会開催
15年度事業報告および検討を行いました。

◆ 12月6日(土)
クリスマスパーティー開催
 ロシア領事館函館事務所ウソフ所長ご夫妻、函館校教員ほか在函ロシア人をお招きし、恒例の親睦パーティーを開催しました。
未来大学のリャボフ助教授のお子様
ダリヤちゃんが歌や司会に大活躍、新たなスターが誕生しました。

函館校からも一年生の渡邉晃久さんのキーボード演奏が加わり、「ブルーライトハコダテ」の合唱に大いに盛り上がりました。

◆ 16年1月16日
理事会開催予定

≪係りから≫

あけましておめでとうございます。1年の計は元旦にあり。皆さん、決意を新たに新しい年を迎えられたことと思います。私も、長年、頭の片隅で眠っていた言葉を思い起こし、今年の誓いといたしました。それは、臨済宗の開祖である臨済禅師の言葉、「随所に主となれば、立つ処皆真なり」です。私は、この言葉を、「どのようなときも、自分が主体となって全力を尽くすことが大切である。それで道は拓ける。」の意味に捉えております。さて、皆さんの今年の決意は?
1月13日から、今年度の後期の後半がスタートします。9月から3ヶ月間にわたって本学に留学し、勉学に励んでいたロシア地域学科3年生8名も無事帰国し、再び全学年がそろいます。
やや寂しかった校内も元の賑やかさを取り戻し、一段と活気づくものと期待しております。
次号の発行予定は、4月9日、原稿の締切りは3月19日です。学生諸君の投稿を期待しております。随筆、紀行文、詩など得意の分野の作品を待っております。(小笠原)