No.93 2017.10"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

函館・ウラジオストク姉妹都市提携25周年記念「2017ウラジオストクの旅」

ロシア極東連邦総合大学函館校 総務課長 大渡 涼子

はじまりはただ、「ウラジオストクに行きたい!」という私の単純な思いだけだった。私にとっては2009年10月、極東大学110周年記念式典に訪れて以来であり、その際は学生とともに当時の極東大学から中央広場までオケアンスキー通りをパレードした。式典のクライマックスでクリーロフ学長が、極東国立総合大学がロシアで3番目となる連邦大学に昇格することを発表した。キャンパスをルースキー島に移すなど今後の発展を大いに期待させる内容であった。
事実、2012年アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議開催のため、ルースキー島には国際会議場を備えた立派な建物が整備され、終了後には極東大学のキャンパスとして生まれ変わった。各国代表の宿泊施設は学生寮となった。ウラジオストク中心部からルースキー島までを結ぶ二つの大きな橋が架けられ、利便性が上がった市民から歓迎された。そんなキャンパスの様子、新しいウラジオストクを私はこの目で見たかったのだ。 
ちょうど今年は函館とウラジオストクが姉妹都市提携を結んで25周年にあたる。それに今年のお盆休み、仕事は6連休となる。「それじゃあ今年、行っちゃおうか」、そんなことを思いついたのは、2月初めのことであった。まず旅行会社に相談してみたところ、スケジュール的には今年から成田―ウラジオ便が就航したオーロラ航空を利用するのが良さそうだ。プロペラ機だが、値段もS7航空より数万円安い。世界各地でテロが頻発するこの頃は、ウラジオストクは「日本から一番近く、比較的安全なヨーロッパ」として人気があるという。現に3月に申し込んでも日本人に人気の第一希望のホテルは満室で、私たちは古くからあるワンランク上のホテルヴェルサイユに泊まることとなった。
かねてより私の気がかりだったのは、函館校のロシア語市民講座受講生のみなさんは一生懸命修練を積んでいるのに、日常でロシア語を使う機会がほとんどないということだった。現地でロシア語の腕試しをしてほしい、街の空気を肌で感じてほしい。そこで3月初め、本当に簡単な日程と予算で旅行の計画を立て、市民講座受講生と函館日ロ親善協会会員に提示したところ、すぐにまとまった数の参加希望者が現れた。
結果、市民講座6名、親善協会4名、極東大学職員2名(一部重複)プラス千葉県在住の作家で今年のロシアまつりで講演していただいた山口ミルコさんを加え、10名からなる市民訪問団ができ上がった。しかも10名すべてが自腹である。だから本当に行きたい人が集まったと思っている。そのほか、興味はあったが家庭や仕事の事情で断念した人もいたので、予想以上の反響があったと言えよう。
みなさんの希望を聞くと、私と同じくウラジオを再訪したいという人、現地で古い友人に会いたいという人、このためにパスポートを取得して初海外という人もいた。私は思い付きで始めたことに責任を感じ、だったらみんなが心から楽しめる旅に、そしてそれぞれが自分でロシア語を話し、自由に街を歩けるスケジュールにしようと考えた。日程も8月11日(金)~16日(水)の5泊6日が基本であるが、個人の都合で早く行った人、早く帰った人もあり、4パターンと融通を利かせた。
ロシアが誇る世界的指揮者ワレリー・ゲルギエフが芸術監督を務める話題のマリインスキー沿海州劇場で観劇したい、ルースキー島にできた世界最大級の水槽を持つ水族館「オケアナリウム」に行きたい。黒澤明の映画「デルス・ウザーラ」で有名な探検家アルセーニエフの家にも行きたい。本屋さんに行く、市場にも行く。全員が同じ予定ではなく、興味がないところは別行動、疲れたらホテルで休む。だけど夕食はなんとなくみんなが集まり、グルジア料理やウズベク料理といった日本ではあまりお目にかかれないものを堪能した。最初は私の立てた自由な計画に不安を抱いていた人も、旅の途中からそれは払拭されたようで、全員がとても楽しかった、またぜひ行きたいと言ってくれたので、私は「この訪問団を組んでよかった」と心から思った。
念願の新キャンパス訪問では、広大な敷地を案内してもらい、APECが行われた会議場にも入れてもらった。ここは今年で3回目となった東方経済フォーラムの会場でもあり、日本からは昨年に続き、安倍首相が出席した。会議場の円卓に座ってもよいとの許可を得て、調子に乗った私たちは、それらしく握手などして記念撮影した。
現在は法学部長となったクリーロフ先生が一行を出迎えてくれた。街の様子は随分と変わり、私たちもそれなりに年を取り、それぞれの立場も変わった。だけどお互い大切にしてきた友情はこの25年間、変わらない。それを再認識した旅であり、今後もこの関係が続いていくことを切に願う。

*旅の詳細は今後、函館校のブログ「極東の窓」に随時掲載します。

学務課お知らせ

АБВГ-Day開催

11月8日(水)、第10回АБВГ-Day(アーベーヴェーゲーデイ)を開催します。これは学年問わず全学生が集う「言語のお祭り」です。函館校で学ぶ日本人学生はロシア語で、本学より留学中のロシア人学生は日本語で日ごろの学習の成果を発表しあいます。
学年の垣根を取り払い、学習成果を試し、かつ舞台度胸をつけるチャンスです。すぐに準備にとりかかりましょう。

冬季休業

今年度の冬季休業は、12月18日(月)から1月5日(金)までです。
期間中、平日は事務局での各種手続き、図書室の利用は可能ですが、12月28日(木)~1月4日(木)は、年末年始休業のため校舎を閉鎖します。
後期授業再開日は1月9日(火)です。

お知らせ

ロシア人留学生が来函します

今年も、ロシア極東大学留学生支援実行委員会の招きにより、ウラジオストク本学で日本語を学んでいる学生4名が函館校に留学します。日本語を学び、日本文化を体験するこの事業は今年で21回目を迎えました。
留学生は、ホストファミリーや函館校の学生との生活を通して、生きた日本語や、実際に日本を訪れなければわからない日本の文化・習慣を直接肌で感じ取ります。
函館校の学生と留学生との合同授業も行われ、一緒に学校行事にも参加します。積極的に話しかけ仲良くしてください。
◎期間:10月25日(水)~11月14日(火)
◎留学生のお名前
 キーチャ・アーシャ      3年生
 プロトニコワ・ダリーナ    3年生
 ブシュエフ・アレクサンドル  3年生
 ドルゴフ・イグナーチイ    2年生

第20回はこだてロシアまつり開催

今年度の「はこだてロシアまつり」は、来年2月10日(土)に開催する予定です。テーマは「ロシアまつり・二十歳」です。当日のプログラムについては、詳細が決まり次第、ホームページでお知らせします。

短信

極東大ハンドボールチーム来校

函館・ウラジオストク姉妹都市提携25周年を記念し、7月25日(火)~28日(木)、極東大学本学からハンドボールチーム13名が来函、函館大学・函館市高校選抜・函館大学付属有斗高校のチームと3つの親善試合を行い、2勝1敗の成績を収めました。
政府の日露青年交流事業として行われたもので、試合のほか、市内観光や函館校の倉田有佳准教授による「函館とロシアの歴史を学ぶロシアゆかりの地めぐり」の散策授業も行われました。
翌日の昼食時には函館校を訪れ、学生たちとロシア語でコミュニケーションを取り交流しました。

青森南高校ロシア語集中セミナー

8月1日(火)~3日(木)の3日間、青森南高校外国語科でロシア語を専攻する生徒と教員が来校し、ロシア語を始め日ロ関係史や文化史など、大学の授業を体験しました。また、ロシア料理体験としてオリビエサラダを作り、試食しました。
 最終日にはイリイン・セルゲイ校長から修了証書が手渡されました。最初は中身の濃い大学の授業に戸惑った様子の生徒たちも笑顔で勉強を終えました。

第2回オープンキャンパス終了

去る9月24日(日)に第2回オープンキャンパスを実施しました。同行者を含め、計20名の参加者をお迎えすることができました。
イリイナ・タチヤーナ准教授による模擬授業では、1年生が、4月からの学習成果を披露しました。
学校行事や学生生活については、学生自治会役員が、画像と共に紹介しました。
卒業生の活躍では、平成16年度にロシア語科を卒業し、現在、独立行政法人国際交流基金に勤務する三方大輔さんから、学生時代の振り返りや卒業後の民間企業でのモスクワ駐在の経験、また現在の国際交流基金でのお仕事については、携わった事業を中心にわかり易く説明されました。最後に、日伊におけるローマを引き合いに、日露関係における函館の意義や函館校で学んだスキルを掛け合わせることで自分の価値を高めてほしいと、参加者のみならず、在校生に向けてもメッセージが送られました。
教職員および在校生との懇談では、ピロシキ(ロシアのパン)とロシアンティーを楽しみながら、楽しい会話がはずみました。
参加者のみなさんにとって、本校での学校生活を具体的にイメージできる機会となったのではないかと思います。

学生からの投稿

「北方四島交流事業」報告 
ロシア地域学科1年 相川 将太

私は9月8日から9月11日に実施された北方四島交流訪問事業で色丹島に行きました。今回の訪問は中高生をメインとした、若者が中心のメンバーでした。私は四島住民の生活や、領土問題について深く知り考えたいと思い今回の事業に参加しました。
8日に根室を出港し、昼に国後島に着き入域手続きを行いました。この日は元島民の講話や実践ロシア語講座等がありました。夜には色丹島穴潤沖に到着しましたが上陸は翌日に行いました。上陸後、車やバスでの移動があったのですが、その道中が舗装された道路はひとつもなく、日本にはないような道を走り驚きました。
島内では学校訪問やスポーツ交流などを行いました。なかでもスポーツ交流では言語の壁を越えて楽しむことができ、日本人とロシア人どちらも笑顔で真剣に取り組んでいたのが印象に残っています。またホームビジットでは最初は通訳者がいなくて大変でしたが、自分のロシア語で話題を振ることができてとてもよい経験になりました。他にも水産加工場や図書館、展望台、消防署の見学も行いました。
今回の訪問事業には元島民の小田島さんという方がいて、話をたくさん聞かせていただきました。アニメ「ジョバンニの島」に描かれていたように、ロシア人の軍人が授業中に教室に押し入ってきたなど、本当にあったことだと実感することができました。中でも強く記憶に残ったのは「北方四島のどこかが還ってこないと、私は死なない。」という小田島さんの言葉です。小田島さんの強い姿勢は私に領土問題をしっかり考えることが大事だと改めて思わせてくれました。
今回交流訪問事業という事で私はロシア語を積極的に使い、住民の方をはじめとした多くの人々と関われたことが本当に嬉しかったです。私のロシア語能力はまだまだで、会話を行うのはとても苦労しました。しかし色丹島を出発する頃には色丹島住民と本当に仲良くなることができ、別れを惜しみ、涙をこらえるほどでした。短い時間での交流で、私はまたいつか必ず色丹島に行きたいと思いました。ですが北方四島に行くことは中々難しいです。しかし今回の訪問の中で仲良くなれたり、理解しあえたりする事から私は領土問題の解決にも何かつながるのではないかと感じることができました。

「北方四島交流事業」報告 
ロシア地域学科1年 小林 拓夢

今回私は9月15日から17日に行われた北方四島交流事業の国後島訪問に参加してきた。
去年の末、安倍総理とプーチン大統領との山口県で行われた会談により日露交流及び会談でも示された北方四島での共同経済活動などにより日本国内でのロシアに対する注目度が上がる中での参加だった。参加者には、ロシア人が暮らす場所を訪れるのは初めてだという人が大勢いた。
根室から船は出たが悪天候により、1日目ははしけが下りずそのまま船内泊となった。2日目にようやく国後島に上陸が出来た。はしけから国後島を見た時の感想は、約70年前まで日本人が過ごしていた地域だとは思えないぐらい進んでいた国後島のロシア化した姿だった。
上陸した我々を待っていたのは、笑顔で迎えるロシア側の政府責任者及び運転手そして親日的な国後島の皆さんだった。車はほとんどがトヨタやホンダといった日本車で、中にはロシア国旗と共に日の丸や日本の絵を描いた車まであった。宿泊先の友好の家に到着すると、食べきれないほどのごちそうでもてなされた。
昼になるとメインイベントである「第三回アニメ・オタク文化青年サミットin国後」が行われた。ロシア人たちは、日本側の主催者が手作りしたり、訪問団が持参したコスプレ衣装に身に包み、ステージに上がってコンテストが行われたり、ステージ上で共に日本のアニメの歌を歌い踊った。ロシア人の若年層での日本娯楽文化の浸透ぶりをこの目で見ることができた。
夜のホームビジットで私が行った先は毎年訪問団を受け入れているトカッチさん一家だった。自家菜園でとれた野菜などで作った豪華なディナーを食べたり、日本好きの7歳になる甥っ子が日本に行った際の話をしたりと、ここでも島民の親日さが表れていた。

今回の訪問で見聞したのは島民の対日感情の良さだ。島民に共同経済活動で何を望むかと聞いてみると、異口同音に日本に直接行ける交通手段が欲しいと答えた。私はこのような親日的な人々と問題を抱えたままでは絶対に駄目で、日露両国民が互いに満足いく解決手段を探るために今後ともこの問題に積極的に関わっていきたいと思う。

函館市インターンシップに参加して 
ロシア地域学科1年 平原 響

8月21日~25日の間、私は函館市役所のインターンシップに参加し、土木部道路建設課で5日間の職場体験を行いました。私の地元で母が市役所職員、父が土木系の仕事を行っており、それぞれの仕事内容に興味を持ったため、私は市役所の中でも土木部を希望しました。
実習は、道路の測量を行い、そのデータを計算し記入、そしてわかりやすく図面に表す、という作業を行いました。高校では文系で数学が苦手だった私にとっては、道路の測量・計算・製図なんてやり方もわからず、5日間で完成できるのだろうか、と不安に思いながら始まりましたが、職員の方々に質問し、わかりやすく教えて頂いた結果、最終日には無事に正確な図面を完成させることができました。
そのほかにも、建設中のトンネルや完成した道路・橋の見学を行いました。実際にトンネルを掘り進めている様子はとても迫力がありました。また、完成した道路の見学では、街路樹や電灯のデザイン、歩道の幅の計画など、観光都市である函館ならではの工夫や配慮を知ることができました。
今回のインターンシップを通して、勤務時間や働いている雰囲気、仕事内容を実際に知ることができ、学校では得ることができない経験をすることができました。
また、測量などの実習や現場見学を行い、日本の道路建設に関する技術の高さを改めて知りました。こうした日本の道路建設技術を、まだ発達していないロシアへ輸出できれば、それがより日本とロシアの交流の活性化に繋がるのでは、とも感じることができました。私は現在1年生で、この先の進路は全く考えられていないけれど、選択として、通訳・翻訳だけでなく、こうした日本の技術を伝えるためのロシア語話者、という選択肢もあるということが分かり、今回の経験は自分の将来を考える上でも意義のある時間となりました。
これからも様々な経験を積み、そして自分に活かしていけるようにしたいです。

エカテリンブルグ国際キャンプに参加して
ロシア地域学科2年 鈴木 康太

私は、7月11日から18日まで、政府の日露青年交流事業「エカテリンブルグ国際青年キャンプ交流プログラム」というものに参加してきました。日本から派遣された16名の学生のうち、本校から6名が参加しました。現地ではロシア人学生とともにキャンプなどの交流が行われ、2017年ウラル日本週間に合わせて開催された産業博覧会「イノプロム」を見学しました。
今回のプログラムに参加することが決定するまで、エカテリンブルグについて詳しくは知りませんでした。名前くらいしか知らない場所でキャンプをするということ、さらに知らない人、国籍が違う人たちと一緒に行動するということは、とても不安でしたし、楽しみでもありました。
 最初の顔合わせの時、私は緊張してあまり会話ができませんでしたが、時間がたつにつれ自然と会話できるようになりました。
今回のプログラムで一番記憶に残っているのはキャンプ2日目です。朝起きるとテントが少し斜めっている場所に設営されていたので、自分の体が自分の寝ていたと思っていたところよりも下のほうにあり驚きました。
この日は、全体を3組に分け、様々な体験をしました。ゲームは、少し高いところから身体をほかの人に支えてもらえると信じて落ちる。みんなで考え、意見を交換して、力を合わせて板の上の水筒のバランスを保ちながら足場の悪い道を進む。さらに向こう岸までどのように渡るかを考える。木に登り、高いところからジャンプしてギリギリ届く少し離れた距離にある棒をつかむ。日本では経験することがないようなことばかりだったので、新鮮さもあり、また、みんなで協力をして達成するということも楽しかったです。

このプログラムに参加し、日本語を学んでいるロシアの学生と様々な会話をしました。皆さん優しくとても面白い人たちでした。とても楽しく、有意義で、勉強にもなりました。またこのような機会があったらぜひ参加したいなと思います。
自分のロシア語力でもジェスチャーなどを交え会話ができることがわかりましたが、ロシア語が全然聞き取れないことがありました。ロシア語力が1年前より身についてきているが、まだまだ分からないことがありました。今回の経験を生かせるようこれからもより一層ロシア語の勉強に励みたいと思いました。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
7~9月までの主な活動実績

○ 8月11日(金)~16日(水)
函館・ウラジオストク25周年記念訪問団に4名の会員が参加、極東大学を訪問するなど友好を深めました。

○ 9月2日(土)、3日(日)
「はこだてグルメサーカス2017」に今年も出店いたしました。すでに6回目となる今年は過去最高の149店が参加、二日合せて23万9千人の来場者でにぎわいました。協会では若手会員や極東大の学生の協力を得て、例年同様ピロシキとボルシチの販売を行い、好評でした。
多くの会員・市民の皆様にご来場、誠にありがとうございました。

○ 10月以降の予定
12月上旬には協会恒例のクリスマスパーティーを予定しております。内容が決まりましたらご案内いたしますので、是非ご参加ください。

≪係りより≫

この夏、学生たちは、北方四島訪問やエカテリンブルグへの訪問などで、日頃学校で学んでいるロシア語力を学外活動で発揮し、また不足を実感してきました。これからも貴重な体験を通して、日々成長していってほしいものです。(倉田)