極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
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ロシア人の長~い冬まつりと占い

はこだてベリョースカクラブ

一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第7回目の講話内容です。
テーマ:ロシア人の長~い冬まつりと占い
講 師:スレイメノヴァ・アイーダ(教授)

ロシアでは、世間一般的な暦(グレゴリオ暦)とともに旧暦(ロシア正教のユリウス暦)も使われています。まず、グレゴリオ暦で年越しを行い、皆で新しい一年を祝うことをしますが、その時点では、旧暦の新年を迎えていませんので、旧暦のお正月を迎えたときもお祝いをします。その差は2週間です。ロシアでは旧暦の伝統的な祭日を祝う風習が残っています。では、その風習について順に話していきましょう。

1月6日は、いわゆるクリスマス・イブです。夕方までに大掃除を行います。食事は油分の入ったものを食べてはいけないと言われていますので、お粥を食べます。肉の入ったピロシキやボルシチは駄目です。
夕方過ぎ、一番星が空に光る頃、窓辺にろうそくを置いて、火を灯します。お祝いの始まりです。窓辺には食べ物も置きます。これは、ロシア風のサンタクロースである「デッド・マローズ」のためです。
また「コリャダー」という存在もロシア独特でしょう。コリャダーとは、人間界と自然界を仲介する、異界・自然界からの使いとされています。コリャダーは家々を訪れて、歌を歌い、食べ物をねだります。家の人々は気前よく振舞わなくてはなりません。コリャダーは食べ物のお礼に一家の幸せを願って、次の家に向かうのです。
そして1月7日は、クリスマスです。この6日~7日にかけての天気を見て、1年の運命を占う迷信があります。7日の天気が暖かいと、春は逆に寒くなると言われています。もし吹雪であったら、春の芽吹きは早いと言われています。もう少し長い期間、6日~19日の間、夜空に星が多く、昼間は雪がよく降っていたら今年の収穫は実りの多いと言われています。
もっと個人的でかつ簡単な占いも行います。4人で占いをする場合、グラスを4つ用意して、それぞれのグラスには砂糖、塩、パンの欠片、指輪を入れます。目を閉じて、回って、一人一つグラスを選びます。砂糖のグラスは幸せ、塩は不幸、パンは金運アップ、指輪は恋愛運アップと言われています。塩を選んだ人は残念ですね。
このような占い(遊び)をして、クリスマスを過ごします。
1月13日は旧正月です。6日の夕方から14日(旧正月の朝)まで家の掃除をしてはいけません。なぜなら、この聖なる日々に受け取った幸せを捨てることになるからです。
同じような期間、1月6日~18日は、太陽の誕生を祝う「スヴャートキ(святки)」とも呼ばれています。スヴャートキの間、村などの小さな集落では、男女ともに仮装し、夕方に集まって歌や劇などをして遊びます。深夜には、バーニャ(ロシア風のサウナ)に出かけ、明け方まで騒いで、再び夜騒げるように、いったん寝に帰ります。この風習は降誕祭以外ほとんど毎晩行っていました。最近は行っている集落は少ないです。街ではほとんど見られなくなった風習です。しかし、有名な風習です。
1月19日、スヴャートキが終わります。イエスがヨハネ川で洗礼した日とされています。スヴャートキで仮装した人たちは、仮装=異界の者になっていたので、身を清める必要があります。ヨルダンと呼ばれる氷の穴に入り、清水で清めます。
1月25日、聖人タチアナの日です。1755年皇帝エリザベッタがモスクワに大学を創設する命令書に署名し、モスクワ大学の創設の記念日となりました。偶然にも一致した大学の設立日とタチアナの日は、ロシア大学の誕生日(学生の日)となりました。現在、タチアナの日には、ロシア国内のいたるところで、学生向けの催し物が行われます。美術館や映画館などでは、若者向けの割引を行います。

ここまで伝統的な1月の行事についてお話しました。ロシア人がその日に何をしているか分かりましたか?最近は、両親共働きの家庭も増えました。旧暦のお正月まで休みという家はなかなかありません。大体が旧暦のクリスマスまでが休みで、今年で言うと1月9日(月)からは学校も仕事も始まっているところが多いです。しかし、ロシア人にとって1月は特別な月であることは今も変わりません。