極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
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ロシアのトランプゲーム

はこだてベリョースカクラブ

一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第5回目の講話内容です。
テーマ:ロシアのトランプゲーム
講 師:イリイン・ロマン(准教授)

今日はロシアのトランプゲームについて、お話しするのですが、そのきっかけがなんだったのかと言うと、息子の読んでいた1冊の本です。
息子が読んでいたのは、アレクサンドル・プーシキンの『スペードの女王』という作品でした。私は30年ぶりに『スペードの女王』を読みました。物語は、高校時代から読んで知っていましたが、トランプゲームの用語が多くて、改めて意味を調べるのに時間がかかることに気づきました。
さて、この話に出てくるトランプゲームは「ファラオン」や「ファロ」と呼ばれています。ソ連時代もですが、それ以前もロシアで賭博は基本禁止でした。上流階級の遊びですね。
ルールは極めて単純で、ほぼルーレットのようなものです。運に任せるゲームで、競技に参加する人数は4人までです。一人の親:バンカー(カードを配る人)とそれ以外の人とで遊びます。用意するものは通常の52枚のトランプのほかに、賭ける用のトランプが必要です。
賭ける人は、自分の手札の中からカードを1枚選びます。そして、バンカーの山札の中から同じカードが出るまで、バンカーはカードを2枚ずつめくります。まったく同じカード(柄も数字も)がバンカーから見て右側に出たら、賭けた人が勝ちです。左側に出たら、バンカーの勝ちです。
このゲームがどう『スペードの女王』で難しくなっているのかというと、ゲームだけではなく人間関係も関わってくるからです。主人公のゲルマンは平民でしたが、祖母は伯爵夫人でした。祖母は、なんでも昔このトランプゲームで散々負けたけれど、ある秘策からその負けをひっくり返す大勝をし、大金を手に入れたそう。更に同じように大負けした青年を哀れに思い、その秘策を教えて勝たせてやったというので、ゲルマンもその方法を知りたがります。でも祖母は教えません。彼は祖母の寝床に押し入り、拳銃を突き出して懇願しますが、祖母は恐怖におののき、そのショックで亡くなりました。この後、ゲルマンの枕元に祖母と思われる幽霊が立ち、ゲームの秘策を告げて消えました。ゲルマンは、この秘策をもってゲームに挑み2勝します。もう1勝するところで、なぜか秘策で教えられたカードとは別のカードを賭けました。もちろん彼は負けました。彼は精神異常者となり、精神病院に入れられることとなったのです。
 
では、最後にもう一つロシアで有名なトランプゲームを皆さんに紹介します。ゲームの名前は『ドゥラーク』。使用するトランプは、6・7・8・9・10・J・Q・K・Aです。プレイヤーは2人から最大6人で遊びます。カードは6枚ずつ配り、最初に手札が無くなった人が勝ちです。
ゲームは切り札の6を持っている人から時計回りにカードを出していきます。出せるカードは6よりも数字の大きいカードかマークの中で一番強いとされるハートのカードです。順番に出していき、出された攻め札全てに守り札を出せば、守備は成功。出せなかったり出すのを止めたら守備は失敗で、場に出たカードは最初にカードを出した人の手札となります。手元にあるカードが無くなるどころか、増えてしまい、最後まで持っていると負けです。『ドゥラーク』=愚か者、バカというゲームの意味になります。
何度かやっているうちに慣れてくると思うので、皆さんもご自宅で家族とやってみてはいかがでしょうか。

△先生の指導の下、一緒にゲームをしました。