極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

ウラジオストクが生まれ変わる日も近い?!

 来たる2012年APEC首脳会議開催のために、ウラジオストクはマッハで工事を進めている。
 町中は工事で大忙しで、橋の建設に始まり、道路整備に建物工事、公園、教会建設、果ては大学、寮の中まで大改装が行われている。留学中にはこの工事についてさまざまなウワサを耳にすることができた。
 工事が一体どんなものなのかわかっていただくためにも、ここでいくつかを紹介しよう。

1.ウワサによると外国人労働者に任せているのは市の予算が足りないためであるらしい。
 だが同時に修理、建設事業は今儲かってる仕事であるらしい。見て取れる現場は10代から果ては60代くらいまでの男性労働者ばかり。彼らのほとんどが北朝鮮人、中国人、それから出身地不明の浅黒い顔立ちのアジア人ばかり(ただし、彼らの顔立ちが少し西欧風なので中央アジアから来たのではないかと勝手に推測) 。
彼らがランチタイムに工事現場の端で固まって小さなピロシキを食べていたのを今でも覚えている。
2.ウワサによると工事はまったく順調に進んでいないらしい。
 写真が11月後半の工事の様子である。冬のロスタイムが痛いところである。

3.ウワサによると2012年のAPECが終わった後、ルースキー島に大学は移らず、カジノが出来上がるらしい。
 みんなが嬉しい。ただし法律上ルースキー島にカジノが建てられればの話であるが…。
4.ウワサによるとここでは韓国人と北朝鮮人の奇妙な遭遇が起こるらしい。
 というのも建設作業員達の一部は北朝鮮人である。ロシア語学校には韓国人も多いので、彼らとこんなに普通に会うことができると、色々と複雑な心境もあるのではないかと思う。

5.ウワサによるとウラジオストクの風の強さに、冬場の橋の上は危なくて渡れないらしい。
 心なしか11月後半になり、風も強くなってきたような…。だから冬場は島に缶詰だといわれている。
6.ウワサによるとウラジオストクの渋滞は昔からで、工事との関係はあまりないらしい。
 もともと坂が多く道路の作りが狭い町であることから、単に車が増えたことによる純粋な交通渋滞なのではという意見である。

7.ウワサによるとルースキー島に大学が移るなんてことは、学生も先生も誰も信じていない。
 大学を統合したこともあり、あまりにも組織の人数が多すぎて無理なんじゃないかという人も多い。少なくともみんながそこで生活できるまでには時間がかかるだろう。
8.ウワサによると橋の建設の現場見学ツアーを市役所で申し込むことができるらしい。
 行ったという人の話を聞いたことがないので、本当にあるかどうかはわからない。

 あと少し、この工事による身近なところの風景がどんなものなのか、書き記そう。まずは想像してみてほしい。日本だったら天幕の中でひっそりと行われている秘密の工事。こちらじゃ歩行者やら走っていく車やらの数センチ横で行われている。
 道を歩けば工事中のパイプに足をとられ、コンクリートの床はあちこちが陥没。信号機はかなりの気分屋で青信号の標識時間は99秒から15秒とランダム。1秒を1秒で刻むこともなく、99秒が10秒もせずに切れることも実によくある。怠け者の信号機は午後から仕事をサボり、電源すら入っていないことも多い。
さらに工事のせいだといわれている渋滞が朝から夕方まで絶え間なく続く。

 歩道工事と建物の塗装が同時に行われているので、歩行者の道は恐ろしく狭く険しい。そこで私たちは渋滞の車列が停滞する車道を歩かざるを得ない。時に道の反対側へ渡るときは、車と人間の間のチキンレースの様なもので、常に命を懸けて渡りきるのである。
 今のここは無秩序といっていいのか、ワイルドと簡単に言い切ってしまえば終わるのか。本当にそんな場所である。
 しかし、私はこの世紀末的な雰囲気がとても大好きなのである。私だけではない、私の友人たちも大半は魅了された。言ってみれば、これはまさにまるでSF映画の世界にいるようなものだから。しかし、現実問題このすべては来年のための大掛かりな準備なのである。つまり、どんなウワサが流れても工事は完成せねばならないのだ。
頑張るんだ!急げ!ウラジオストク!

ロシア極東連邦総合大学函館校 ロシア語科2年 小早川 眸