No.61 2009.10"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

未来からの銃声

ロシア極東国立総合大学函館校 教授 グラチェンコフ・アンドレイ

皆さんは昨日あったことを覚えていますか?多分ね。おとといのことは?ちょっと難しい。では2週間前のことは?人生の主な出来事のイメージを「思い出」という形で残す働きによって、記憶は私たちを過去から守ってくれます。記憶の主な働きは、覚えることではなく忘れることです。
人類の歴史についての記憶はどうでしょう?過去の記憶は数千年の間、神話や伝説という形で残りました。人びとはそれを記憶にとどめ口承で伝えました。しかし、いつの間にか情報に歪みが生じました。言葉も変わりました。気候の変動があり、恐ろしい伝染病が流行り、残忍な敵の襲来を受け、神話は変わりました。新しい種族が生まれ、また新たな神話が生まれました。新しい神話はしばしば古い神話に話を塗り重ねたものであり、古い神話はもうもとの形が分からないくらいに変形してしまいました。
そこに文字が現れました。過去の情報が粘土や石や皮や紙に刻まれました。しかしそれで過去の情報が過去に近くなったでしょうか?いいえ。人びとはすぐに気付きました。紙に書かれた過去の記憶にどんな情報でも付け足すことができると。彼らは自分たちに必要な過去を作り出す方法を知ったのです。
今日、過去は学問によって作り出されます。歴史、考古学、古代地理学等々。過去に関する多くの事実が集められました。しかし科学的裏付けのない過去を必要とする場合もあります。
現在、ユーラシア大陸全体で、過去についての学問がブームです。なによりまず一番始めの部分です。韓国でも、日本でも、モンゴルでも、カザフスタンでも、ウクライナでも、ロシアでも、他国とは違い自国の文化はシュメール文明あるいはアトランティス文明から、あるいは宇宙からの来訪者からもたらされたなどとする驚くべき仮説が日々生まれています。
唯一中国は、これら過去にまつわる野蛮人の騒動を、自国の歴史文化の高みから静かに眺めています。しかし、そのうちこの野蛮人は中国もその文明も存在しない過去を作り出すのかもしれません。
その一つの例がウクライナとロシアです。社会が大きく変わったことにより、多くの不幸な出来事が起こりました。社会が激しく分裂したことで、意識も大きく分裂してしまいました。突然現在となってしまった未来を恐れる人びとは、新たな過去を作り始めたのです。そこは清らかな自然と、川には魚が泳ぐ平和と静けさの世界です。そしてそこに強く美しい祖先がいます。彼らはみな身の丈2メートル程もあり、金髪碧眼で勇猛で賢者で才能にあふれています。シュメール文明とアトランティス文明は彼らが作りました。世界で初めて文字と文化を作ったのは彼らです。2,3万年前の世界では人々はロシア語で考えロシア語を話していました。このような仮説に対して、モンゴルや韓国や日本の過去についての仮説がどのように対抗してくるかは興味深いところです。
一方、現在ロシアでもウクライナでも科学の発展のための国家予算の割当ては減り続けています。削られるのはまず歴史と考古学です。学校教育のレベルは急激に低下しました。
最近ロシアで行われた高校生へのアンケートで、第二次世界大戦の主な出来事についての設問に対し、ある生徒が「ソ連はドイツと同盟を結び、日本とアメリカに対抗して戦った」と答えたそうです。4年間にわたって自国の領地内でナチスドイツと戦った国にとっては驚くべき結果です。歴史教育の成果としては世界記録ものです。これ以上のものがあるでしょうか?あってはならないのですが、このままではこのようなことは繰り返されるでしょう。日本もこうなるのでしょうか?そうでなければいいのですが。その時日本の生徒は「日本はかつてアメリカと同盟を組み、ソ連とドイツと戦った」と言うのでしょうか?

留学実習

ウラジオストク留学出発
9月3日(木)、ロシア語科2年生と  ロシア地域学科3年生の計5名が留学実習のため新潟からウラジオストクへ出発しました。1~3ヶ月間の留学期間、本学付属の学生寮で生活しながら、寮に隣接するロシア語学校で勉強をします。学生たちは現地でロシア語の勉強をするだけではなく、ロシアで暮らしながら、ロシア人の習慣や物事の考え方に触れ、函館校で蓄えていた様々な知識に肉付けをしていきます。
ロシア語学校から出されるたくさんの宿題に四苦八苦したり、異文化の中で戸惑うこともあると思いますが、たくましく成長して元気に帰国してもらいたいものです。

教務課より

中間試験日程
下記の期間は通常の時間割どおりに授業が行われますが、科目によって 授業中に中間試験を行います。   
試験の有無や実施方法は、各科目担当教員が授業中にお知らせします。
 12月7日(月)~12月11日(金)


論文中間報告会日程
年内は、4年生を対象に以下のとおり 論文(卒業論文)中間報告会を行います。各自、担当教員の指導のもと万全の準備で報告会に臨むこと。

 ○第5回  10月27日(火) 14:40~
 ○第6回  12月 1日(火) 14:40~

学生課より

ТРКИ受験案内
今年もロシア連邦教育科学省認定 「外国人のためのロシア語能力検定試験 (略称=ТРКИ)」を実施します。ТРКИとは、ロシア語を学んでいる外国人のロシア語能力(ロシア語コミュニケーション能力)を証明するものです。日本国内における受験は、2000年度にロシア極東国立総合大学函館校において初めて可能となりました。
今年度の試験日は12月12日(土)、 13(日)、試験会場はロシア極東国立総合大学函館校で、基礎テスト、1級、2級の試験を実施します。ロシア語を学習されている方であれば学外の方も受験できます。  
実施要項と願書の配布は、函館校在校生には学校事務局にて行いますが、学外の方は下記までお電話いただくか、学校ホームページからご請求ください。

ロシア極東国立総合大学函館校事務局
      ロシア語能力検定試験係
電話:0138-26-6523
http://www.fesu.ac.jp/


冬季休業
今年度の冬季休業は、12月14日(月)から1月11日(月)までです。
この期間、平日は事務局での各種手続きや図書室の利用は可能ですが、土日祝祭日と、12月29日(火)から1月5日(火)までは校舎を閉鎖するため、一切利用できません。
授業開始日は、1月12日(火)です。


各種証明書の発行について
成績証明書、卒業見込証明書、JR学割証の発行や、学生証等の再発行は、原則として申込当日の処理はできませんので、日数に余裕を持って申し込んで下さい。
冬季休業中に就職活動・帰省のため各種証明書が必要な学生は、必要日からさかのぼって早めに申請するようにお願いします。

お知らせ

ロシア人留学生5名が来函します
ウラジオストクにある本学付属東洋学大学日本学部の5名の学生が、日本語と日本文化を学ぶために函館校に留学します。   
留学生はウラジオストクで日本語や 日本について専門に学んでいます。専攻は日本経済、日本文学、日本史です。
10月19日(月)に函館に到着し、  翌日から約4週間、日本語の授業と、書道・華道・茶道などの日本文化体験や、市民交流行事に参加して、11月14日(土)に函館を離れます。

留学生氏名(全員4年生/女性)
・コヴィリャエワ ソフィヤ
・ミネンコ パリーナ
・ペトロワ ガリーナ 
・ストレブコワ アナスタシヤ 
・フィセンコ アナスタシヤ 

学生からの投稿

北方四島交流訪問事業に参加して
ロシア地域学科2年 芹沢 寛人

私は、7月14日から21日に実施されたビザなし交流(受入事業)で根室へ、そして9月11日から14日に実施された交流(訪問事業)で色丹島へ行ってきました。
7月の交流では、通訳ボランティアとして行動し、また、北方領土からきた子供たちの世話役としての役割も兼ねました。私は日本語でもあまり話さない方で、それはロシア語でも同じことでした。子供たちの話す言葉を聞き取れていても、なかなかロシア語が出てこず、戸惑いましたが、プロの通訳さんのアドバイスを聞き入れ、軌道修正しながらなんとか頑張りました。
子供たちは、とても自由奔放で、裏表というものが、日本本土の子どもたちと比べて、ないように思えました。ですから、思ったことを素直に言ってくるのです。それは良いことでもあり悪いことでもありますが、そうした違いを理解するという点では色々勉強になりました。子供たちは日本料理よりもお菓子に夢中になっていました。彼らには、まだ日本料理の良さは理解できなかったのでしょう。言うなれば「三度の飯よりお菓子」といった具合でした。性格は素朴で、絵を描くのが非常に巧く、私の目の形を気に入ったのか、凧を作る時、凧に私の目を描き入れていました。

9月の交流では、私が北方領土を訪問するという立場になり、返還要求者という形で参加しました。
船で、国後島を経て色丹島へ行ったものですから、非常に時間がかかりました。色丹島についたとき、空は真っ暗で島の明かりも少なく、文字通り、満天の星空を見ることができました。朝になり、甲板に出ると美しい入り江が目の前に広がり、海も山も平地も全てが、まるで有名な画家が描いたかのような風景でした。入り江に廃棄された沢山の船も、ここでは一つのキャンパスに収まってしまうかのようでした。
島の道は全てが未舗装で、私は移動中の車で洗濯機の中の洗濯物の様になりながら、外の風景を眺めていました。大日本帝国時代に建てられたとみられる建物が廃墟としてまだ残っていました。一部の島の人たちは日本本土に何度も訪れているらしく、本土の町のことをよく知っていました。懇談会では積極的に意見を述べ、色丹島の方たちと、できる範囲で共通の夢を持ちたいと言いました。外務省の方の北方領土問題の取り上げ方についての注文や、麻生前首相の件について留意し、問題については間接的に触れるという形をとりました。私は訪問するに先立ち開かれた研修会で「日本側とロシア側では元となる知識やその背景が違うので、この問題に関して話し合いをして結論を出すのは今のところ非常に難しいと思う」、と述べ、それについては外務省の方から同意を得ました。
省の方と話してわかったのは、日本は国として不完全だ、ということでした。今の日本の状態を鑑みるに、今のところ独自に外交を展開するというのは難しいでしょう。ある民族の諺に「平和を望むなら戦に備えよ」とあります。この「備え」とは戦争をするための準備ではなく、戦争を避けるための準備を指します。平和を望むためには強い軍隊が必要ですが、日本はアメリカに依存しきっています。キッシンジャーは今年「今から10年後には、日本は強力な軍隊を保有しているだろう。」と言っています。鵜呑みにするわけではないですが、アメリカは弱体化しているので、再軍備は時間の問題ということですね。北方領土問題にはアメリカも絡んでいるので、この責任の取らせ方を考えるのも面白いでしょう。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
7~9月の主な活動実績

○ 7月1日(水) 歴史パネル展示
「安政の5カ国条約と 箱館開港」開催

函館開港5カ国協議会の主催事業である歴史パネル展示「安政の5カ国条約と箱館開港」オープニングセレモニーが7月1日開催され、倉崎会長が出席しテープカットに参加しました。このパネル展は7月1日から12月30日まで旧函館区公会堂の2階ホールにて開催され、当協会からは函館とロシアの主な交流や在函館ロシア領事館の歴史などについてパネルを展示しています。函館開港150周年を記念した特別展示ですので、ぜひご覧になってください。

○ 7月18日(土)はこだてロシアまつリ「かいこう15」開催
当協会後援の2009はこだてロシアまつリ「かいこう15」が開催されました。当日雨天でしたが、会員の皆様をはじめ約500名ものお客様で賑わい、大成功のうちに幕を閉じました。

○ 8月4日(火)
「2009函館ミュージック・ハイ」参加

函館開港五カ国協議会主催の『2009函館ミュージック・ハイ』に、事務局スタッフとして参加し、会場設営やピロシキ等物品販売に協力しました。

○ 8月18日(火)~19日(水)
 第22回日ロ沿岸市長会議出席

18日から函館市内ホテルにて  第22回日ロ沿岸市長会議が開催され初日函館市長主催のレセプションに倉崎会長が出席しました。翌19日には、ウラジオストク市及びユジノサハリンスク市代表者を招いての姉妹都市代表者歓迎昼食会が開催され、倉崎会長、松本専務理事が出席しました。

○ 10月4日(日)「第5回地球祭」開催
函館市国際交流プラザで開催されます。当協会では函館ロシアセンターを開放し、パネル展示を行うほか、極東大学生によるシャシリク(串焼肉)販売もあります。その他世界各国の音楽コンサートなど様々な催し物が予定されておりますので、皆様ぜひご来場下さい。

≪係りより≫

『ミリオン・ズビョースト61号』をお届けします。次号62号は、1月6日発行を予定しています。ご期待下さい。季節の変わり目です。健康にはくれぐれもご留意下さい。(関谷)