No.67 2011.04"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

新しい教育についての考え方と新しいタイプの大学

ロシア極東連邦総合大学函館校 校長 イリイン・セルゲイ

20世紀は、人類の宇宙空問への進出や科学・物理学などの分野で偉大な発見があった世紀として歴史上に残るであろうが、それと同時に、二つの世界戦争が起こり、多くの残虐な革命が起こるなど大変動があった時代としても記憶される。そのほか、20世紀は世界中で文盲撲滅の世紀としても知られている。しかし今なお、この問題はアメリカをはじめとする先進国にとって、かなり当面的な問題でもある。
長い間、旧ソ連は学者・医者・教師などのインテリ人が世界で一番多いことを誇っていた。ソビエトは1940年代には文盲人がほとんどいない社会であった。しかし、ソ連が崩壊した後、この問題が再び浮上した。原因はいくつか考えられる。一つは教育を含む様々な社会分野における国家予算の不足で、それはまず最初に、学校から若い教師の流出を呼び起こした。そしてもちろん、優秀な教師の不足は教育全体の水準に多大なる悪影響を与えた。さらに生活水準の低下が、教育にも悪影響を与えた。多くの家庭で、特に田舎で経済的理由から子供を学校に行かせる余裕がなくなったのだ。
現在ロシアには、この問題が特にカタストロフィー的な規模となっている地域が何カ所かある。例えばチェチェン共和国。長年に渡り戦争が続き、子供を学校に行かせる余裕がない。そして読むこともできない、書くこともできない世代を育ててしまう。
そのほか最近ロシアにはもう一つの大きな問題が起こった。それは見捨てられた、完全に教育を受けることのできない浮浪児の問題だ。つまり文盲というのはいわゆる「社会の病気」だと言えるであろう。ただし、これは疫病を予防するように短期問で局限することができるものではないと考える。文盲というのは常に予防し、注意を払わなければならない、重い長患いのようなものだと思う。そしてそれは現在のロシアにも見られる。このような世の中で、将来のノーベル賞受賞者、あるいは新しいトルストイなどを育てることができるのだろうか。
21世紀において社会の進歩は、各国としても世界全体でも、前世紀以上に教育の水準にかかっていると私は確信している。つまり、現在の子供の教育水準が21世紀の経済・社会発展を定めることになると思う。今世紀は前世紀のようには自然資源の利用に対する期待はできないので、新しい技術の需要が高まるだろう。そして新しい国際関係を作り出すために、新しい思想や様々な国際問題に対する新しいアプローチが必要になるだろう。
社会における教育水準が国際関係に直接関わるのだろうか。先生が教え子にただ自分の知識を伝えた、前世紀の教育の定石である教授法と違い、現在の教育の基盤は情報だと言われている。情報の欠如、あるいはその不足が国際問題を含め多くの問題解決を妨げると思う。
21世紀の教育はどのように発展するのだろうか。今世紀の教育は国際化とグローバライゼーションの道を歩むことになると思う。国と国との文化の相互理解なしで、平和的・調和的国際社会を築くことはできない。このような国際社会の創出には教育が決定的な役割を果たすに違いない。当大学を卒業した200人近い日本人の若者たちは、様々な日口関係の分野において、近い将来、いろいろな問題を解決することのできる、広い知識を持った新しい世代の人間になると確信している。国際的な教育を受けているこのような世代が、将来性を持った人間となるに違いない。
でも教育の発展を続ければならない。現代のロシアに新しいタイプの大学が必要になった。今までにロシアには約250の国立大学があった。かなり有名な大学もある。でも、世界的なレベルに一致する大学はそんなに多くはない。 
去年、高等教育の水準を高めるために、ロシア政府が新しいタイプの7大学の設立について決議を採択した。その7つの新しい大学の一つが極東大学である。
このような新しい大学の特徴は三つある。一つは、新しい仕組み。付属大学、学部がなくなる。その代わりに9つのスクールを設立する。勿論、教育の内容も変わる。新しい大学の一番大事な目標になるのは国際教育。もう一つの特徴は、新しい極東連邦大学はロシアシベリア・極東地域における最大の大学となる。もとの極東国立大学を基礎として3つの大学(極東技術大学、太平洋経済大学、ウスリースク教育大学)を合併した。学生の総数は7万人になった。その中に函館校が入っている。三つ目の特徴は、新しい考え方の若い世代を育てる大学の戦略的な目標である。極東連邦大学の最終的な最大の目標は、2020年までに太平洋アジアにおける技術・教育センターになることなのだ。

学務課よりお知らせ

校舎の利用時間
本校の校舎利用時間は午前8時30分から午後5時までです。利用時間外に校舎を利用したい時は、事前に事務局に申し出て許可を得るようにしてください。
平日以外は原則としてお休みのため、校舎の利用や、校舎内への立ち入りはできません。

校内掲示と掲示版について
学生への諸連絡は、校内掲示によって行われます。
校内には、事務局、学生係、教務係からの連絡事項、就職関連、図書関連、自治会・サークル関連のものを、それぞれ専用の板に分けて掲示しています。全部で6種類の掲示板が設置されていますので、登下校時や休み時間に掲示物を確認し、見落としが無いように注意してください。
掲示したものは、掲示日より学生に全て周知されたものとして扱い、原則1週間で撤去します。
掲示を見落としたことによって生じる不都合・不利益について、学校では責任を負いかねます。

出席率について
本校の学生は、各授業の出席率が80%以上なければ期末試験の受験資格がありません。そのため、特に出席率が低い学生については、留年防止のため、保護者の方へ文書で通知をし、学生への注意を促します。

欠席について
本校では、欠席する場合は学務課へ届出が必要です。欠席する日が事前にわかっている場合は、前日までに事務局で届出をしてください。やむを得ない事情で急に欠席することになった場合は、まず、当日の朝のうちに欠席する旨とその理由を事務局に電話で連絡してください。次に、登校した日に欠席届を提出してください。
なお、欠席した授業は、そのままにせず、必ず自習して、早いうちに遅れを挽回してください。
欠席や遅刻が多くなると、授業についていくのが難しくなりますので、安易に欠席しないよう心がけ、普段から健康管理にも気を配りましょう。

補習について
補習を受けたい学生は、前日までに、直接、担当教員に申し込んでください。なお、無断欠席や私用による欠席が多く、欠席の状況が改まらない学生には、補習時間の利用を認めない措置をとることがありますので注意してください。

論文ガイダンス

4月19日(火)、午後2時40分から、 ロシア地域学科3年生と4年生の全員を対象に論文ガイダンスを実施します。
ガイダンスでは、極東大論文ガイドブックを配付し、鳥飼先生の「論文作成」授業内容説明、「論文経過報告会」の日程説明等行います。

JASSO奨学金

4月14日(木)、日本学生支援機構奨学金の定期採用募集説明会を行いました。
校内の申込書提出期限は、書類の不備補正期間を含めて、5月9日(月)です。

留学説明会

ロシア語科2年生とロシア地域学科3年生を対象に第1回留学実習説明会を行います。日時は4月下旬を予定しています。詳細が決まり次第、掲示してお知らせします。
留学説明会は合計4回開催します。日時はそれぞれ近くなったら校内掲示でお知らせしますので確認してください。

図書室より

図書は大切な財産です。みなさんが気持ちよく利用できるよう、今一度図書室利用規則を確認します。
① 図書室を利用できるのは
本校教職員および学生、聴講生のほか、本校教職員の紹介がある方。開館時間は平日午前9時から午後4時30分。
② 館外貸出しているのは
 同時貸出は5冊まで。一般図書の貸出日数は15日間です。日数、手続きは書物により異なります。貸出が長期に渡る場合は、必ず所定の手続きをとってください。
③ 係が不在の時は 
 無用のトラブルを防ぐため、司書が不在の時は必ず事務局職員を通じて貸出・返却手続きをとってください。
詳細は司書または事務局にお尋ねください。

短信

3月3日(木)「税関職員ロシア語研修」受講の税関職員5名が、約2ヵ月の研修を終え、職場に復帰されました。
研修中は1日4時限のロシア語学習と講義、宿題、ロシア語弁論大会出場準備に追われる大変ハードな毎日を頑張りぬき、修了式を迎えました。
修了式翌日には、全国税関弁論大会(ロシア語の部)が税関研修所で開催されました。函館校での研修を終えたばかりの研修生5名も出場、見事上位入賞を果たしました。
この後、一旦職場に戻られた皆さんは、5月に実施される税関フォローアップ研修を受講されるため再び本校を訪れ、ロシア人教授陣を中心にしたカリキュラムによりロシア語にさらに磨きをかけます。

お知らせ

平成23年度オープンキャンパス
今年度は下記の日程でオープンキャンパスを行います。開催日が近くなりましたら、詳しい内容をホームページなどでお知らせします。
このほかに、学校見学を随時受け付けています。お気軽にご連絡ください。
日 時:第1回 6月25日(土)午後1時~3時
    第2回 8月 6日(土)午後1時~3時
    第3回 9月25日(日)午前10時~12時

2011はこだてロシアまつり
今年は7月16日(土)開催予定です。詳細は近くなりましたら本校ホームページ等に掲載します。

卒業生からの寄稿

卒業を迎えて 
ロシア語科 山上 真季

予震に揺られながら書いている。
卒業式前日、目を疑うほど大きく、そして甚大な被害をもたらす地震が東北で起きた。
“これはもしや、私に卒業するなということか…?”
2年前の春もすごく寒く、5月にさしかかろうとしていた4月末に雪が降ったのを思い出した。
「ありえない!」そう言いながら“北海道の洗礼”ともとれる空から舞う大量の雪を見つめていた。
“何でこんなところに来ちゃったのかな…。”
そう思ったのも束の間、北海道にいた時間は何とも有意義な日々であった。
元々、マイペース、端から見たら自己中な私は先生方と仲良くなり、楽にロシア語のスキルを磨こうと懸命にアプローチをした。分からないところは日本語、自信のあるところは大いにロシア語、たまに自分で作った日本語ともロシア語ともとれない変な言語でおしゃべり。“伝えたい気持ちがあればいいの。気持ちのベクトルが同じ方向なら伝わるわ。”そんな軽い理念を持った私のロシア語だが、何だかそれがあったからか学校以外の行事や活動にも誘われるようになった。もちろん、興味のある事に有無をいわずに。
サハリンのキャンプ場でSDカードを盗んだロシア人の子供を説教したり、ロシア艦隊が入港した時は、「あれが買いたい、これが買いたい」とわがままを言う将校や水兵を「分かった、分かった」となだめたりと、行事一つ一つ、活動一つ一つも私の心には残っている。
それよりもそれを通して出会った人々との時間は私にとってかけがえのないものである。
人との出会いや縁は、自分で思っていても中々確立はできない。だが、縁があって出会えたなら、それは何らかの“運命”だと私は思っている。意味があるものだと…。
海外に出ればいろんな人種、国籍、バックグラウンドや価値観をもつ人に出会えるのは当たり前だと思っていた。面白いから海外に出ようと考えていたのもこれがやみつきになったからである。日本では味わえない“カルチャーショック”が大好きなのだ。
北海道にいた2年間も海外にいた時と同じように出会い、繋がり、広がることができ、“逆カルチャーショック”であった。
“言葉”は単純に目的として認識されがちだが、私は“言葉”こそ、人と人とを結ぶ“ツール”ではないかと思っている。
ロシア語という“ツール”を使って、北海道で出会い、支えてくれた周りの人々には感謝したい。そしてまた、私の最強の“ツール”であるロシア語を武器に未来で私を見つけてくれる“運命”の人々に出会えるのが楽しみである。
のどかな雰囲気の似合う街から高層ビルのジャングルと化した東京で人の波に揉まれる生活が始まる。

ロシアへの憧れ 
ロシア語科 平田 真也

私は高校三年生の時、 NHKラジオロシア語講座をきっかけにロシア語の存在を知った。古いオーディオテープから流れるきれいな音。抑揚があって、言語とは思えない、まるで何かのメロディーを聞いているようだった。
最初は文字から覚えた。日本語とはかけ離れ、英語とも似つかないキリル文字に悪戦苦闘していたが、子供がひらがなを習得するように、何度も書いて覚えた。すると単語も次第に頭に入るようになり、超初級者ほどの語彙力をつけた頃、オーディオ越しではなく、ロシア人と直にコンタクトを取りたくなった。そしてロシア極東国立総合大学函館校へ進学した。
オーディオ越しでしか聞けなかった言語。それを母国語として話す人たちが自分の周りにいる。授業も高校で受けていた外国語の授業とは違っていた。会話は難易度の高い単語以外はすべてロシア語。文法は理論重視の講義。ロシア人の娯楽が教材のロシア語演習。翻訳するための背景知識を補う通訳論。ロシア語で国語の授業を受けているようなロシア語講読。 
深く広く知るアンドレイ・イワーノビィチの講義。すべて必死で聞いて覚えた。  しかしすぐに忘れる。忘れても、何度も繰り返し説明してくれる先生方。とてもありがたかった。極東大学で手にした知識、人間関係は、私の一生の宝物だと思う。人間として成長できました。
最後に。極東大学では、文字で表しきれないくらい貴重な体験をさせていただきました。私の行動を寛大に見守ってくださったイリイン校長をはじめとする先生方や事務局の方々にとても感謝しています。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
1~3月の主な活動実績

東日本大震災により被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。皆さまのご安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

○2月8日(火)
アントン・ステパーノフ ピアノ・リサイタル(当協会後援)が開催されました。会員の皆様にご参加いただきました。
今年は6月30日から7月10日までロシア文化フェスティバル IN JAPANのオープニングが函館で予定されています。ピャトニツキイ記念国立アカデミー・ロシア民族合唱団コンサートやボリショイサーカスの函館公演などが予定されていますのでお楽しみに。
また会員の皆様には5月開催予定の総会において今年度の事業計画をお示しいたします。
今年度も皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

≪係りより≫

○ 平成23年度第1回目の巻頭言はイリイン校長によるものです。ロシアの今後の教育の在り方を考察し、変化するロシアの教育の状況の中で、極東連邦総合大学の重要性を述べています。
○ 今年の文化フェスティバルはとても多彩です、どうぞお楽しみください。
○ ミリオンズビョースト67号をお送りします。次回は7月です。お楽しみに。
(長谷川)

ロシア文化フェスティバル2011 IN JAPANのお知らせ

このフェスティバルは、2006年日ロ首脳会談で締結された「日露行動計画」に基づき実施が始まり、今年で6回目を迎えますが、新生ロシア連邦20周年・聖ニコライ渡来150周年を記念して開催される今回は、函館でオープニング行事が開催されることとなりました。
この機会に、ロシアの本物の芸術にぜひ、触れてください。

<国立ボリショイサーカス公演>
日時:6月30日(木)~7月3日(日)
場所:函館市民体育館
* 市内各所でチケット発売中です。

<ピャトニツキイ記念国立アカデミー・ロシア民族合唱団コンサート>
日時:7月2日(土) 18:30開演
場所:函館市芸術ホール
* 無料ですが、全席指定・鑑賞券が必要です。 5月2日(火)より芸術ホールで配布開始。
* 問合せ ℡0138-55-3521

<チェブラーシカとロシア・アニメーション>
日時:7月1日(金)~3日(日)
場所:北海道立函館美術館 *無料

その他、写真展やロシア人墓地慰霊祭など盛りだくさん!
詳細は函館市ホームページで。
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/kikaku/kokusai/russianfes.html