No.11 1997.04"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

並はずれの言葉の体験

ロシア極東国立総合大学函館校 教授 アニケーエフ・セルゲイ

「エスペラントって何?」「何の役に立つのか。」「難しいでしょう?」「使っている人はいるのか。」「英語じゃだめなの?」などとよく聞かれることがあります。そんな質問を受けるとき、論議や抽象的な話をするより、自分の体験を少しでも具体的に挙げることが出来たら、話には実感が出るのではありませんか。
私のエスペラント語とのつき合いはもう18年近くまでにのぼっていますが、一口に「国際語」と呼ばれているこの言葉を皆様に簡単ながら紹介することが出来るものかという心配が先に出てきます。もし、いつか後でまた機会があったら詳しく説明しようと思っています。
エスペラント語は私にとって何なのだろうかと考えると先ず第一にただ趣味ではないだろうかと言うに至ります。自分から説明しようとする時も人に問われる時も明瞭なことはとっさに口に出せなくなるくらいです。エスペラントという言葉は明確には答えにくい不思議な存在であると思うからです。
エスペラントが初めて提唱されたのは1887年のことでした。その当時はコンピューターはおろか、テレビ、ラジオ、電話さえありませんでした。エスペラントは何よりも「言葉」であるということを百年を越える実用の歴史が的確に証明しているとも言えるでしょう。日本語や英語を大切に思う人が沢山いるのと同じようにエスペラント語を「自分の言葉」として大切に思う人もかなりいると想像もつくでしょう。なぜならエスペラント語を使っていて自分のものとし、楽しいことは相当あるからです。むしろ、人生を楽しくするための手段として利用させてもらっているといった方が適切なくらいであります。楽しさの最高なものは色々な人との出会いではないでしょうか。エスペラント語を実際に使っている同士の場合、言葉や国境の壁がないので出会いの可能性の範囲が非常に広いと思うのは私だけではないでしょう。その気になれば世界は何と狭いものだろうと言えるようになったり、世界のかなりの国の人とすぐにでも知り合いでなく、本当に親しい間柄になることまであります。このようなエスペラント語の利用価値は最もすばらしい特徴であることは言うまでもないと思います。さらに情報源が豊富になることも確かです。エスペラント語のおかげで他職種の人、外国の人からも多くの情報を得ることが可能になるのも事実です。エスペラント語を学習し実用する過程で地球的な規模で物事を見る新しい視点を獲得します。世界の各国の政変や問題などの最中に庶民の生活がどう変わっているのか、現地の人の話を直接聞くとよりよく理解できます。
エスペラント語を利用している人は、現在百万人と言われており、まだこんな人間はざらにいるとは言えないから同志的結束が固く助け合う気持ちが強いのです。実利的な面でのプラスは色々ありますが、その他に精神的なプラスの方がずっと大きいと思います。国際的な視野を持つこともできるし、民族差別や人類解放にも敏感になります。自分の国の言葉での翻訳の少ない小国の文学を読むこともできます。生涯学習の一環として自分を啓発することもできます。自分の自己実現に利用して生きがいを得ることができます。他の外国語を学ぶ時の単なる語学趣味とはひと味違った面をどのように生かすことができるかは各個人の考え方によって大きく違ってくると思われます。