No.75 2022.04"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

ロシア料理の「驚き」

ロシア極東連邦総合大学函館校 教授 アニケーエフ・セルゲイ

ロシア料理と聞いて、まず思い浮かべるのはやっぱりボルシチとピロシキだ。そして、なんだかとても脂ぎったようなイメージがある。しかし、実際にはロシア人はどのようなものを食べているのだろうか、また、ボルシチやピロシキはロシア人にとってどのような存在なのか。そもそもロシア人の一般的な食生活とはどのようなものなのか、ということについて考えていきたい。
ロシア料理の特徴として、挙げられるのはその質素さである。ロシアには「シチ(キャベツのスープ)のためなら人は結婚する」、「シチとカーシャ(麦のおかゆ)があれば満ちたりた食事」、という有名なことわざが存在するくらいである。ロシア料理には、きのこや魚料理が多く、色々な種類の植物素材、穀物・野菜・草木の実などを利用しようという傾向がある。また、ペチカと呼ばれる暖炉でじっくりと煮込む料理が多い。それはなぜか?
一つ目の理由は、ロシアの寒さだ。あの長く厳しい冬のために、常に十分な食材を得られるわけではない。食材が少なくなる冬に備えて、ロシア人は普通、ダーチャという小屋のような小さな別荘に付いている家庭菜園で採れたものを瓶詰などにして保管し、冬の間はそれらを大切に食べていくのだ。
二つ目の理由は、十世紀末から(ソ連時代を除いて)現在に至るまで、ロシアの国教でありつづけているロシア正教である。ロシアでは、その正教の教えによって「肉を食べてはいけない週」や「牛乳を飲んではいけない週」などが定められており、そうした定めのある期間は一年のうち、二百日近くにもおよんだ。ロシア料理がかなり早い時期から精進料理(植物・魚・きのこ)と非精進料理(牛乳・卵・肉)に分けられ、特に精進料理の方が発展していったのは、正教の定めが厳しく守られていたからだろう。
庶民のシチとカーシャ中心の質素な食生活とは対照的に、帝政時代のロシアの貴族はものすごく贅沢な食生活を送っていた。例えば、15世紀ごろの皇帝の宴会では50~100種類の料理が出るのが普通。イワン4世の宴会には500もの料理が、金や銀の皿で並んだらしい。その上、ピョートル時代以後、ロシアの上流階級や貴族は、西欧の料理の伝統を取り入れ始めた。ドイツやスウェーデン、特にフランスが多かったが、それらの国々を訪れた際にコックを連れて帰り、彼らに料理を作らせていた。そのため、フランス料理とロシア料理の間には相互に影響関係が見られる。例えば、オードブル、スープ、魚料理、肉料理……という現在のフランス料理に見られる配膳方法は、その時のコックを介してロシアからフランスにもたらされたもので、それまでフランスではすべての料理が同時にテーブルに並べられるという方法がとられていたのだ。
ところで、ボルシチは19世紀ごろに生まれたロシアの家庭料理。現在、ロシア料理といえばこれを連想する人は多いと思うが、厳密に言えばウクライナ料理である。ボルシチに入れる具や調理法は、日本でいう味噌汁のように家庭によって様々で、一緒に煮込む肉も特に決まっていないがビーツという野菜を使うことだけは決まっている。ビーツとはカブや大根の仲間でサトウダイコンとも呼ばれている。甘酸っぱいような味が特徴で、世界の砂糖の約40%はビーツから作られている。16世紀ごろまではビーツそのものをボルシチと呼んでいた。
ビーツとともにボルシチに欠かせないのが「スメタナ」という、牛乳からつくったサワークリームのようなもの。これを仕上げに入れることによって味が引き立つ。
ボルシチの作り方は40種類以上もあるといわれている。中でも代表的なものが「モスクワ風」、「シベリア風」、「ウクライナ風」。ハムやソーセージを入れるのが「モスクワ風」、具の野菜を細かく刻まないのが「シベリア風」、スパイスをたっぷりと効かせるのが「ウクライナ風」。
そしてロシア産として有名な食べ物が、キャビア。今も昔も「お金持ちの食べ物」で、庶民の口に入ることはあまりない。先に述べたように、貴族の食文化と庶民の食文化の間には大きなへだたりがあるが、貴族から生まれた「ビーフ・ストロガノフ」は今では庶民の味になっているし、日本でも有名なピロシキは庶民が生んだ味で、のちに貴族が食べるようになったのだ。
日本でピロシキというと、ひき肉などの具を詰め込んだ揚げパンを指すが、ロシアではその具はきざんだキャベツだけ、ジャガイモだけというものもあるし、調理法も揚げるだけでなく焼くものもある。また、ジャムなどが入った甘いものもある。
ある国の食文化を調べることは、その国の国民性についても調べることだと思う。ロシアの食文化を調べてみて、一言でいうなら「驚き」である。日本人の間ではロシア人はどこか粗野というか、ぶっきらぼうなイメージがあるらしい。しかし、例えばロシア正教のしきたりを厳格に守っていたり、経済的な理由もあるのだろうが、ロシアに昔から伝わっている質素な食事を今でも日常的に作っていることなどから見ると、信仰心の厚い、伝統を重んじる人々なのではないかと思われる。また、その味付けもレシピを見てみるとシンプルなものが多い気がする。ぎとぎとに脂ぎっているわけではなさそうだ。
そういう訳で、ロシア料理は日本人にとってなじみやすい味なのではないか。ただ、その量はハンパじゃないので、やはりお酒と同様、料理についてもロシア人と張り合おうとするのは無謀なのかもしれない。

人事

事務局が新体制で始動
3月31日付で、図書室司書・吉崎侑さん、 学務課長・長谷川吉秀さんが退職いたしました。
吉崎さんは平成11年4月1日の着任以来、約15年にわたり蔵書の整理や図書の貸し出し業務などにあたられました。図書室利用者からの質問には幅広い知識をもって迅速かつ丁寧に対応し、また、ときには学生の相談にも優しい笑顔で気さくに応じるなど、皆に慕われる存在でした。
長谷川さんは平成22年4月1日に着任、 学務課長として学生自治会の指導、学生相談、進路指導や学生募集業務など、幅広い業務に携わりながら、常に学生一人ひとりにきめ細かく心を配られました。また、中学校での長年の音楽指導の経験を生かし、卒業式・入学式で歌われる学生歌「ガウデアムス」の歌唱指導や、本学留学生の音楽授業を担当されました。
吉崎さん、長谷川さん、本当にお疲れ様でした。
長谷川さんの後任には、4月1日付で倉田 有佳(くらた ゆか)学務課長が着任しました。 倉田さんは准教授として1年生の「日ロ関係史」の授業も担当します。本校においてもこれまでの経験を生かし、活躍されることを期待しています。

学務課よりお知らせ

校舎の利用時間
本校の校舎利用時間は、平日8時30分から17時までです。原則として平日以外は校舎の利用はできません。
行事の準備など、特別に上記の利用時間外の校舎利用を希望する学生は、事前に事務局で申請をして、利用許可を得る必要があります。


校内掲示と掲示板について
学生への諸連絡は校内掲示板に掲示物を貼ることにより行われます。掲示板は内容別に、「事務局」、「学生係」、「教務係」、「就職支援」、「図書室」、「学生自治会・学生サークル」の6枚に分かれています。毎日の登下校時、休み時間にも掲示板をチェックすることを習慣づけてください。
掲示物は、掲示日より学生に全て周知されたものとして扱い、原則1週間で撤去します。
掲示物を見落としたことによって生じる不都合・不利益については、学校では責任を負いかねます。


出席率について
本校の学生は各授業の出席率が80%以上なければ期末試験の受験資格がありません。期末試験を受けられないと進級はできませんので、留年防止の観点から、特に出席率が低い学生については、保護者の方へその旨を文書でご連絡し、学生へも注意を促しています。


欠席について
授業を欠席するときは学校への届出が必要です。6日以内の欠席で就職活動や親族の結婚式のように事前に日程がわかるものは、その前日までに科目担当教員に届け出てください。病気・けがによる1週間以上の欠席をした場合は、医師の診断書の提出が必要です。それぞれ、届出用紙は事務局に設置しています。
授業欠席分の学習の遅れは自習のほか、毎日放課後に設けている補習時間も利用して、早期挽回してください。特に語学の授業では欠席・遅刻回数が重なるにつれ学習の遅れを取り戻すのが難しくなりますので注意してください。
安易な気持ちから遅刻、欠席グセをつけないよう、日ごろから生活リズムを整えるなど、体調管理を万全にしましょう。


補習について

毎日放課後14:40~17:00まで、全学生対象の補習時間を設けています。教員の当番表は教務係掲示板に貼り出してあります。補習を希望する学生は当番の教員に直接申し込んでください。

論文ガイダンス

4月の論文ガイダンスでは「極東大論文ガイドブック」を配付し、今年度の論文テーマや、「論文作成」授業の内容等について説明します。ガイダンスの開催日程は、掲示してお知らせします。

留学実習説明会

ロシア語科2年生とロシア地域学科3年生対象に、渡航手続き、渡航準備に関する説明会を4月~7月までの間に3回実施します。
実施日時等、詳しい内容については、掲示してお知らせします。
留学対象の学生はパスポートの所在を確認しておいてください。渡航手続きのため、4月中に一度学校に持って来てもらう予定です。

日本学生支援機構奨学金

在学届の提出について
本校入学前、高校等で日本学生支援機構の奨学金を貸与されていた学生は、在学届を提出することにより、本校在学中は奨学金返還期限を猶予することができます。この手続きを希望する学生は、4月12日(金)までに事務局学務課に申し出てください。


平成25年度大学等奨学生採用候補者へ
4月10日(水)までに決定通知【進学先提出用】を事務局学務課へ提出してください(入学時特別増額貸与奨学金について書類提出の指定がある場合は一緒に提出のこと)。書類に不備がなければ識別番号(ユーザIDとパスワード)を交付します。
インターネットによる進学届の提出は4月19日(金)までに行ってください。

在学採用募集説明会
4月19日(金)14:40から4番教室で、 採用募集説明会と申込書類配付を行います。貸与を希望する学生は必ず出席してください。
この日どうしても出席できない学生は、説明会開始前までに事務局学務課で申し出てください。

図書室より

図書は大切な財産です。みなさんが気持ちよく利用できるよう、今一度図書室利用規則を確認します。
① 図書室を利用できるのは
本校教職員および学生、聴講生のほか、本校教職員の紹介がある方。開館時間は平日午前9時から午後4時30分。
② 館外貸出をしているのは
同時貸出は5冊まで。一般図書の貸出日数は15日間です。日数、手続きは書物により異なります。貸出が長期に渡る場合は、必ず所定の手続きをとってください。
③貸与・返却・延長手続きは 
必ず事務局職員を通じて貸出・返却手続きをとってください。

図書の利用について、不明な点は事務局にお尋ねください。

短信

ロシアンホットバザール報告
1月19日(土)、20日(日)の両日午前11時から午後3時まで、本校にて「2013ロシアンホットバザール」を開催しました。
このイベントは函館と歴史的にゆかりの深いロシアについて理解し、関心を高めてもらおうと極東大学と財団法人北海道国際交流センター、函館日ロ親善協会、日本ユーラシア協会函館地方支部が実行委員会を組織して初めて開催したものです。
本校教員によるロシア料理教室とロシア語教室、引地桂子さんと高橋セリカさんによるロシア民謡コンサート、函館童謡の会プチコンサート、エコールバレエ・マユミ教室の生徒さんによるバレエ、羊毛マトリョーシカづくり体験やロシア民芸品販売など、両日ともロシアに関して幅広くご紹介するプログラムをご用意したところ、たくさんの方に来場していただき、ご好評をいただきました。

オープンキャンパス・個別学校見学

オープンキャンパス

今年度のオープンキャンパスは下記の日程で開催します。
当日はロシア語の模擬授業、学生自治会役員による学校行事やサークルの説明、教職員在校生とピロシキを食べながら懇談をする時間ほか、本校を紹介するプログラムを設けています。
本校への進学を考えている方、また、保護者の方はこの機会にぜひお申し込みください。
それぞれ開催日が近くなりましたら、詳しい内容をホームページ上でもお知らせします。  
日 時:第1回  6月22日(土)午後1時~3時30分
    第2回  8月 3日(土)午後1時~3時30分
    第3回 10月20日(日) 午前10時~12時30分

個別学校見学

日程的にオープンキャンパスに参加できない方に向け、随時、学校見学を受け付けております。お申込みの際には、ご希望の日時をお知らせください。
なお、ご希望日時によっては授業見学ができない場合がありますのでご了承ください。
オープンキャンパス、学校見学ともに保護者の方だけのお申し込みも可能です。
お申込み、お問い合わせは事務局(電話番号 0138-26-6523)までお願いします。

寄稿

退職にあたって
元図書室司書 吉崎 侑

このたび、15年間務めさせていただきました図書室の仕事を退職することになりました。15年という長い間図書の仕事に携われましたのも、教職員の皆様や学生の皆様のお陰と心より感謝しております。
図書室に溢れるロシアという文字に囲まれた幸せな15年間でした。小学校の6年生で巡り合って半世紀以上、図書係の仕事が大好きな私が、人生の最終章の日々をロシア極東連邦総合大学函館校の図書室で過ごせましたことを本当に有難く思っております。
ドアを開けると香ってくる古い本のにおい、ちょっぴり薄暗くて秘密っぽい大学の廊下の佇まい、そしてもう勤務路としては上って来ることはないこの素敵な八幡坂、毎日聞こえていた観光客の笑い声や月に1,2度は展開する大きな白いリムジンから降り立つ幸せそうな新郎新婦の撮影風景など、折々の景気を大切な思い出としてこれからは過ごしていきたいと思っています。
ロシア極東大学の図書室はロシアと函館の絆の歴史を後世に伝えていく大切な宝の蔵です。これからも大学と共に末永く大切に引き継がれていく事を心より願っています。

卒業式卒業生答辞
ロシア地域学科 鈴木 竜斗
ロシア語科 平岩 史子

本日は、私たち卒業生のために、多くのご来賓や関係者の皆様にご臨席いただき誠にありがとうございます。卒業生一同心より御礼申し上げます。
振り返れば、2年前、あるいは4年前、これから始まる函館での生活に大きな期待や不安を胸に入学式に出席したことが、つい昨日のことのように思い浮かびます。北海道以外から来た学生の多くは、故郷から遠く離れた土地での一人暮らし、外国語学校という特殊な学校生活に慣れるのは少し時間がかかりました。しかしながら、「ロシア語を学びたい」という同じ思いを持った仲間たちに囲まれ、勉強に励むことで、毎日が新鮮で刺激のある生活を送ることができ、生涯忘れられない経験になりました。
本校では、単なる語学だけでなく、ロシアの文化についても理解を深めることができました。私は合唱サークル「コール八幡坂」に参加し、ロシアの歌をたくさん歌えるようになりました。ウラジオストクに留学した際、自然に囲まれたウスリースクの林をハイキングするという機会を得ました。赤や黄色に色づいた綺麗な木々を眺め、『木々の葉は黄色“Листья жёлтые”』という歌をロシア人の先生方、友人たちと歌いながら散歩をしたことは、私にとって忘れられない思い出です。
歌だけではありません。そのほかにも、本校での行事を通じ、様々なことを経験しました。言語まつりАБВГ-dayでは、それまで培ってきたロシア語能力を学校全体に披露することができました。また、2月のマースレニッツァでは、長い冬に終わりを告げ、春を呼ぶという民俗習慣を学びました。
そしてこの春、私たち卒業生一同は2年間、または4年間、勉学に励んできた函館校を旅立ち、それぞれの道を歩んでいきます。新たな環境で困難なことがあっても、本校で学んだ多くの知識、経験を糧に、未来を切り開いていきたいと思います。

最後となりますが、これまで私たちを優しく指導してくださった先生方、一人一人に目を配り、支えとなってくださった事務局の皆様、本当にありがとうございました。卒業生一同、心よりお礼申し上げます。そして、後輩の皆様方のご活躍と、ロシア極東連邦総合大学函館校の一層の発展を願い、答辞とさせていただきます。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
1~3月の主な活動実績

○1月19日・20日
当協会も実行委員会に加わり会員の皆様にご案内チラシをお送りした「2013ロシアンホットバザール」が開催されました。当日はロシア映画の上映やレストラン、ロシア雑貨販売、またロシア民謡のコンサートやロシア料理教室、マトリョーシカづくりなどが催され、会員の皆様をはじめ大変多くの方々にご来場いただきました。
新年度もホットバザールのように多くの方にロシアを知っていただけるような催しを企画したいと思います。会員の皆様には5月開催予定の総会において今年度の事業計画をお示しいたします。今年度も皆様のご理解とご協力の程よろしくお願いいたします。

≪係りより≫

今年度の入学式を4月8日に行いました。北海道、東北はもとより、九州、四国、関西、首都圏など、全国各地から精鋭を迎えてのスタートです。目指すは、“ロシアに精通したスペシャリスト”。目標に向かって心新たに、力強い一歩を踏み出していただきたいと思います。
次号の発行予定は7月です。皆さんの投稿をお待ちいたしております。(伊藤)