極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

紅茶の日

 何気なく通う喫茶店、いつものお気に入りの紅茶。でも今日はどれにしようか迷う。「あれ?ロシアンティーもあるんだぁ~。」と思いつつ、落ち着いた音楽流れる店内でNHKロシア語講座の本をバックから出す。「Чай пожалуйста.」かぁ。確かに日本人は、ロシアンティーといえばジャム入れて飲むって、思いこみすぎ…。
 テーブルの片隅に置かれている小冊子が気になり目をとおす。なにげなく過ごしていた日々の中に『 紅茶の日 』というのがあるのをご存知でしたでしょうか?『 紅茶の日 』って??
 日本で「おいしい紅茶の店」を認定推薦している日本紅茶協会HPに書かれているので内容を引用させていただきます。

 海難にあってロシアに漂着した日本人、伊勢の国(現在の三重県)の船主、大黒屋光太夫他2名は、ロシアに10年間滞在せざるを得なかった。帰国の許可を得るまでの辛苦の生活のなかで、ロシアの上流社会に普及しつつあったお茶会に招かれる幸運に恵まれた。 とりわけ1791年の11月には女帝エカテリーナ2世にも接見の栄に浴し、茶会にも招かれたと考えられている。
 そこから、大黒屋光太夫が日本人として初めて外国での正式の茶会で紅茶を飲んだ最初の人として、この日が定められた。このことに基づいて、日本紅茶協会が1983年(昭和58年)に11月1日を「紅茶の日」と定めた。

 帰宅そうそう、井上 靖 著書「おろしや国酔夢譚」をあらためて読みふける。大黒屋光太夫がロシアで得た経験。私達の日々も経験で築き上げられているような気がしてくる。皆さんが初めて飲んだ紅茶はどんなものでしたか?
 古典的、伝統的ともいえるロシアでの紅茶。ティーポットに紅茶を濃くだし、サモワールで沸かしたお湯で好みの濃さに割りながらカップいっぱいに注ぐ。ロシア極東で飲む紅茶は、冬の冷えた体を温める。体だけではない、心も豊かになる。
 人が集い、楽しい会話の一時がうまれる。おいしいお菓子とともに。紅茶をふるまうおもてなしのロシア人の心は、お抹茶をたてる亭主の心と同じ。《色》が違えども一つ屋根の下は平等であるかのように…。
 さて紅茶でものもうかぁ…。結局、ジャムを紅茶の中に入れるのか入れないのか?その一杯をおいしく飲んでいただければ、そして飲み終えてもなおステキな時間が続けばどちらでもいいですよね。
 紅茶の湯気の向こうにロシアが広がっているような思いで飲みましょう。「光太夫が手にした茶器は、ロモノーソフ磁器だろうなぁ~。いや、グジェリかな?」と紅茶を入れるカップが決めらない……。
 皆様、今年はステキな『 紅茶の日 』を迎えてください。
 ちなみに、4月13日は、日本ではじめて喫茶店ができた『喫茶店の日』でした。


サモワールとグジェリでこんな感じ?

函館校のサモワール・コレクション

函館校卒業生 山名康恵