極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

二度目の留学

 新潟から飛行機で約一時間半かけて、私はまたウラジオストクにいた。九月の半ばで、函館ならそろそろ涼しくなる頃なのだが、ウラジオストクはとても暑かった。寮に向かうマイクロバスの中で、古く懐かしい友人に会っているような感覚を覚えた。夜の空の色やウラジオストクの空港、去年見たままの景色。日本と似ている、といつも思う。約一年半ぶりのウラジオストクは何も変わらずに私を迎えてくれた。
 去年と違うのは留学する時期が違っているということだけだった。去年は春で今年は冬である。”ものすごく寒い”という言葉に驚かされながら着いたウラジオストクは、まだ夏ということもあり、思いのほか暖かくむしろ暑いといっても良いくらいだった。毎日晴れていて,今年は少し長く夏を過ごしているような気分になった。
  前に一度留学しているという経験はすごいものがあり、割と早く寮の生活に慣れていった。元々ひどく体が弱いくせに胃だけは強いので,今のところお腹をこわすこともなく、おいしくロシア料理を食べている。
  函館では用事のある時にしか外に出ないのだが、ここウラジオストクでは授業が終わった後、すぐ外へ出掛けている。いろいろなお店を見てまわったり、アイスやピロシキを買って食べながら散歩をしたり、ロシア人の友達と遊びに行ったり。外に出ても寮にいても、日本では無い発見がたくさんあり、驚くことの連続である。
 ウラジオストクに着いて半月くらい経った頃に、ようやく寮に住んでいるロシア人ではない外国人と話すようになり、親しくなった。お互いの共通語がロシア語なので、もちろんスムーズに会話はできないのだが、顔を見かけると必ず話し掛けてくれるので、それが嬉しいし楽しい。ロシア人以外の外国人にも自分のロシア語が伝わる喜びは大きい。
 私は寮の中の台所(кухня)が好きだ。去年もそう感じたが、いろんな国の人と交流ができる。私自身このкухняで料理をすることはほとんど無いのだが、それでも一日に何度か足を運び、ここで国際交流をしている。そして日にちが経つにつれ、このウラジオストクに来なかったら、絶対にこの人達には会えなかったんだな、という不思議な気持ちになった。日本でもロシア以外の国でも会えない人達に、ここで会っているということに、ちょっとした驚きと共に感動を覚えた。そう思うとこの留学は本当に貴重だ。きっと一生のものになるだろう。
 こんなことを書いているうちに、雪が降ってきた。暑いと感じていた季節も終わり、これから”ものすごく寒い”という季節になる。二時間差だった時差も一時間に変わったりする。全てここにいないと経験できないことで、それが不思議だ。
 ウラジオストク、もしくはロシアのどんなことで驚き、どんな発見があるのかは、ぜひ自分自身で経験して確かめてほしい。ロシアでは色んな理不尽なことや、良い意味でも悪い意味でもアバウトなことを経験すると思う。きれい好き過ぎる日本人にとっては苦しい部分もあるだろう。でも、一日に部屋の中で最低二匹はゴキブリを見たとしても、私はこの寮と部屋とロシアが好きだ。
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ロシア極東国立総合大学函館校 ロシア地域学科3年
平 沼 多 恵