極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
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ロシア人の迷信

はこだてベリョースカクラブ

一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度5回目の講話内容です。
テーマ:ロシア人の迷信
講 師:イリイン・ロマン(本校准教授)
みなさんは迷信を信じていますか?
「ツバメが空を低く飛ぶと雨が降る」「蛙が鳴くと雨が降る」、これらの言い伝えは自然に由来し、近年どうしてこのように言われているのかは解明されました。
今回、私がお話するのは、このようなものではありません。日本での迷信をたとえ話ですると「へそのゴマを取るとお腹が痛くなる」とか「夜に爪を切ると親の死に目にあえない」とかそういう類のものです。
ちなみに私はこの日本の迷信は今回調べて初めて知りました。
このような合理的な根拠はなくとも、信じられている迷信がロシアにもあります。迷信の背景には歴史的な意味と伝統的な意味が隠れています。宗教が関係している場合もあります。
いくつか迷信を紹介しながら、その出来た背景が分かるものは説明を入れながらお話しましょう。
・外出したとき忘れ物などして家に戻ったら、必ず鏡を見ること。そうしなければ災いが起きる。
さぁ、出かけるぞ!と何か理由があって家を出たはずなのに、家に戻ってしまったらそのやる気が半減してしまうものです。その半減した精神を補うものは鏡です。自分自身を写す鏡は、パワーを2倍にする意味があります。だから、家を再度出発するときは鏡を見るのです。
・長期で家をあけるときは、出発前玄関などに少しの時間座る。
旅に出る前には必ず、心静かに座る時間を取ります。これは今では忘れ物がないか確認する時間にもなっていますが、そもそもは旅の安全のためです。
また家には普段良い妖精がいるとされ、人間がいなくなったことで家から出て行ってしまわないように、「私は出かけませんよ、ここにいますよ」と妖精をだます意味もあったそう。
・玄関などの敷居には悪い妖精がいる。
悪い妖精に邪魔をされないように、敷居の上での荷物の受け取りや、敷居を挟んでの握手は縁起が悪いとされています。少し前に宇宙ステーションの中で、アメリカ人の宇宙飛行士がロシア人の宇宙飛行士に握手を求めましたが、宇宙ステーションのつなぎ目、ちょうど敷居にあたったのでロシア人宇宙飛行士は拒否しました。もちろん、その場での握手が嫌だっただけなので、場所を変えて握手をしました。
・外を出歩いているとき、空っぽのバケツを持った女性に会ったら不幸になる。
この迷信はインドの方から伝わってきたとされています。昔は水道がなく、井戸水で生活していたので、街の中にバケツを持った女性が普通に歩いていました。彼女のバケツが空っぽだったら、その空っぽのバケツに命を取られるという意味があったので、皆必ず避けました。今も田舎の方では信じられています。
・家の中で口笛をふくと貧乏になる。
ロシアで口笛は船乗りがするものと言われています。口笛には風を呼ぶ意味があるので、それで帆を張るのです。なので、船の上でなく家の中で口笛をふくと風がふいて家にあるお金が飛んでいくと言われています。
・食器や陶器が割れると幸運が訪れる。
小さな子どもが誤って割ってしまっても、ロシアではほとんど怒られません。食器は毎日使うもので、私たちの悪い気が食器に溜まっていっていると考えられています。そのため、食器が割れることで悪い気と別れ、幸運が訪れるとされているのです。
・お祝いに時計の贈り物は不吉。
恋人へのプレゼントで腕時計を贈るなんてしたら、とんでもないことです。これは「別れたい」と誤解されてしまいます。
・包丁が手元から落ちたら、男性のお客さんが来る。フォークとスプーンが落ちたら、女性のお客さんが来る。
ロシアの名詞には男性名詞、女性名詞があることからも由来はありますが、基本的にロシアでは家に妖精がいると考えられています。どちらも誤って落とすと危険なものですが、わざわざそれを使って妖精が来客を教えてくれていると信じられています。
・新しい家に引っ越したら、まず家の中に猫をいれないといけない。
猫は悪いものを見つけてくれるとされています。そして見つけてくれるだけでなく、悪いものを追い出してくれるとも言われています。だから新居には猫をいれます。
・家や車などの高価な買い物をしたときには、購入者は友人や近所の人にお酒をふるまう。
昔は神父さんが聖水でお清めをしていたところから始まるのですが、今では水がお酒になり、ふきかけるのではなく、皆のお腹の中におさめられる様になりました。この風習、僕はとっても好きです。
・女の子は机の角に座ると結婚できない。
テーブルに座ってはいけないというマナーを教える理由があるでしょう。
・市電の乗車券の6桁の数字を3・3に分けたとき、それらの数字の和が同じ数になったら幸運が訪れる。
現在は乗車券が変わってしまったので古い迷信ですが、揃うと奇跡のようでした。幸運が訪れるように皆、その切符を食べました。
・手のひらがかゆいとお金が入ってくる。
・鼻先がかゆいとお酒が手に入る。
これらは子どもだけが信じているものではありません。大人も子どもも皆、信じています。親が子どもに危ないからという理由やマナーでという意味での迷信もあるでしょう。私も子どもの時にだけ信じていた迷信があります。「マンホールを踏むと不吉」は今思えば、道路事情を考えてのことでしょう。「洋服を裏返しに着ると誰かに殴られる」はきちんと服を着なさいという意味でしょう。裏返しに着て殴ってくるのはきっと誰でもなく両親ですから。
このように私たちの生活の中には、迷信が数多く存在します。信じるか信じないかは自分次第ですが、迷信はこれからも受け継がれていくことでしょう。