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杉本侃客員教授による特別講義が開講されました

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 本校では、年に1回、杉本客員教授による特別講義「日ロ貿易論」を実施しています。
 杉本先生は、東京外国語大学ロシア学科を卒業後、(社)ソ連東欧貿易会(現:ロシアNIS貿易会)、サハリン石油開発機構(株)に長年勤務され、さらに日本経団連日ロ経済委員会事務局長、ERINA(環日本海経済研究所)副所長などを歴任し、ソ連時代から現在に至るまでの長きにわたり、日ソ・日ロ経済関係、なかでもエネルギー問題の専門家として活躍されています。
 さて、本年度の特別講義は6月11日(月)に行われました。
 最新の日ロ関係のキーワードに「政熱経温と首相・知事訪ロ」を置き、講義では、1.「制裁」への抗体ができたロシア経済、2.日ロ貿易-低迷は量より価格に起因、3.日ロ協力はビジネスとロシア忖度型の三点を軸に、レジュメ(17ページ)に沿って話を進められました。
 まず、表「日ロ首脳会議の記録」では、会議時間にも注目しながら、これまで18回行われたことから、SPb国際経済フォーラム、そして日ロ首脳会談の中から話題性のあるトピックについてお話いただきました。
 次に、2000年から2017年までの日ロ貿易の推移を見ていきました。輸入が激減している理由は、国際石油価格などの資源安が主因で、中国が原油を爆買いしているため、日本がロシアから輸入することができないからだ、と詳しく解説していただきました。
 次に、日ロ経済関係の現状と展望としては、2016年5月以降の二国間の主要な合意件数は183件(政府発表。現時点では196件)で、政府間の8項目以外にも154件の合意があり、8項目の協力分野の中で貿易が伸びる要素、つまり「触媒」になる可能性があると考えられるのは、資源分野、産業多様化、極東開発・輸出基地化であるとの説明がありました。
 続いて、いくつかの事例報告を挙げながら、杉本先生が特に注目しているのは、健康寿命の伸長に役立つ協力で、長寿国日本が、平均寿命の低いロシアを支援する意義や可能性について説明がありました。また、ソ連時代から関わってきた経験を生かしながら、JGC(日揮)がトマトやキュウリなどの温室栽培や医療分野での多角的協力、ソ連・ロシアビジネスに60年近く関わってきた前川製作所の極東の産業振興・輸出基地化に向けた広範な協力、そして、早くからⅬNG輸送市場に参入した商船三井の北極圏でのLNG輸送や極北における風力発電所など、数多くの事例を紹介していただきました。
 また、中国による「新植民地主義の台頭」と「トランプ政策の危険性:「関税障壁」が抱える問題」と題し、日ロ経済関係を二国間関係からだけでなく、ロシアと陸でつながる中国にも注目していく重要性についてお話されました。
 そして結びの言葉は、「広がるロシア語のチャンス」と題し、ロシアで展開している日本企業数を、ロシア全体とモスクワに分け、2000年から2018年までの推移を示しながら、「今ロシア語要員の需要は増加傾向」にあること、地方企業にはスピーディーな決断をできるため「可能性」がある反面、経験と資本力では「限界」があるが、北海道は例外的に良い関係を築いている、「皆さんの活躍の場は無限にある。函館校で学んでロシア問題のプロになって下さい。会社に勤めながら自分の道を拓いてください」という温かくかつ力強い応援メッセージをいただきました。

 今年もまた、ご自身が半世紀以上関わってこられた体験に裏打ちされた緻密かつ大胆な分析を交えながら、経済を中心とした「最新」の日ロ関係について詳しくお話いただきました。
 学生は大いに刺激を受けて、講義時間終了後も疑問点を投げかけていました。
 ありがとうございました。

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