学報 "МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

学報"МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

No.90 2017.1 "Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

子供時代から知っているお正月料理/ロシア極東連邦総合大学函館校副校長フョードル デルカーチ

  ロシア人のメンタリティーは「中道を知らない」とよく言われる。それは本当かどうか分からないが、ロシア式の新年の祝い方を見れば、正にその通りだと言える。外国人の印象も聞くと、ロシアン・スタイルのホームパーティーに出される料理の数は「一週間にも食べきれない」と言われる。それも否定できないね。お客さんに不自由を感じさせないように「テーブルが壊れるくらい」の余分なごちそうを出すという伝統があるからだ。
  お正月のごちそうは一週間分ではないが、三日分は作る。だって、親戚もたくさん集まるし、友達がいきなり来ることもお正月の常識だから。しかも、ロシア式の「おせち料理」は食材の種類は多くないが、だいたいカロリーの高いものを使うのだ。もちろん酒も飲む。新年の祝いが終わると皆が、「せっかくの一年のダイエットは、この三日間で無駄になったな」、と訴えるが、あまり後悔するようには見えない。さらに、お正月の夜に寝れば「罰が当たる」、と言われているから寝不足もある。
  というわけで、ロシア人式の新年の祝いというのは、なかなか疲れるものなのだ。「あの休み疲れを取るには、また休暇が必要だな」、と呟くロシア人が多い。それも仕方がない。ロシアの新年祭は、誰も耐えられない嵐のようなものだ。「新年を楽しく迎えたら一年が楽しく過ごせる」、とロシア人が言うように、誰でもダイエットや自己規律を緩めて、好きな人と好きなことをしたいわけだ。
  さて、ロシアのお正月のメニューはいったいどのようなものか?ソ連という国がなくなって既に26年が過ぎたというのに、ソ連的な食文化は今でも生きていると言える。モスクワなどの大都会の人は、必ずしもソ連の伝統に従うわけではないが、お正月は幾つかの食材や料理が連想されることは間違いないだろう。種類は多くない。なぜならば、ソ連人の生活の大きな特徴は物不足だったからだ。いや、ソ連人は決して飢えてはいなかった。当時市販されていた食材や食べ物の種類が少なかったのだ。その限られた食材以外のものを「買う」のではなく「достать」、つまり「ゲットする」ことが問題だったのだ。
  例えば、闇市場で買うか、あるいは特別調達制度地域(モスクワなど)へわざわざ買い物に行かなければならなかった。大都会に住んでいる親戚に頼んで郵便で送ってもらうとか。また、突然ある商店で珍しい食材が一時的に売り出されると、それを直ぐに「поймать」、つまり「キャッチ」しなければならなかった。
  美味しい海産物のようなもの(スモークサーモン、イクラ・キャビア類、高い缶詰など)は「贅沢品」とされ、手に入ればお正月のためにわざわざ保管していた。
  日本人は驚くかもしれないが、ロシアでもお正月の大事なイメージ食品はミカンだ。ソ連時代、私の故郷シベリアでは、柑橘類は比較的に珍しいものであった。小学校時代の「ヨールカ祭」を思い出すと、一人ひとり新年のプレゼントとして「Дед Мороз(ロシア式のサンタ)」からお菓子の入った袋をもらっていた。中にキャンディーやクッキー、そして一番待ち望んでいた「宝物」、すなわち、ミカンが一個必ず入っていた。長い長い冬の中に感じた夏の香り。
  ソ連の「ミカンの里」は、グルジア共和国だった。主な産地は黒海に面するアブハジア自治区で、ちょうど12月あたりが収穫の時期だった。今はもうソ連がないし、グルジアも独立国家(ジョージア)になって、アブハジアだってグルジアから独立してしまったのに、あのミカンは相変わらずロシアのお正月の食卓に現れる。
  ところでお正月料理といえば、3~4日分を作るので、それは主として冷蔵庫に入れて保管できる冷たい料理のことだ。
  その一、「Селёдка под шубой(毛皮のコートをまとったニシン)」。まさに、ソ連食文化の天才的発明だと言える。市販される数少ない食材からお祝いの料理を作ってみよう。一層一層重ねるケーキのような作り方だ。まず容器の底に塩漬けニシンと玉ねぎをみじん切りにしておく。その上にマッシュポテト、次にみじん切りのゆでニンジン。またマッシュポテト。そしてゆでたビーツをみじん切りにしてマヨネーズと和え、それを最上段に塗り付ける(マヨネーズは、あらかじめスーパーで「キャッチ」しておかなければならない)。そして出来上がり!美味しくて、満腹感は抜群。お酒のつまみにも最適。特に二日目に美味しいね。
  その二、「ヴィネグレット(Винегрет)」。ジャガイモ、ビーツ、ニンジンを茹でる。冷めたところで細かい角切りにする。次に玉ねぎとザワークラウト(キャベツの漬物)を細かく刻み、缶詰グリーンピース、サラダオイルを加え全部をかき混ぜる。塩・胡椒はご自分の感覚でどうぞ。大変な人気で、ロシア人なら皆が好きだろう。僕以外はね。なぜなら僕の本当の好物は、次の料理だから。


「起きなさい、まだオリヴィエもカニ(どちらもサラダ)も残っている。食べないと!」
「いやだ、死なせて!」

  ちょっと皮肉だが、新年パーティーを生き抜いてきたロシア人の気持ちがよく伝わってくる。
  明けましておめでとうございます。皆さまに良いお年を!

学務課おしらせ

卒業試験日程

1.ロシア地域学科4年生は、下記の日程で国家試験を行います。
国家試験    2月27日(月)
卒業論文審査会 2月28日(火)
2.ロシア語科2年生は、下記の期間内で卒業試験を行います。
2月27日(月)~3月3日(金)
3.ザチョットは、以下の日程で行います。

後期試験日程

1.ザチョット
2月20日(月)~2月24日(金)
2.エグザメン
2月27日(月)~3月 4日(金)
3.再試期間
3月 6日(月)~3月10日(金)
卒業年次以外の学生にのみ、この期間に再試験を行うことがあります。

出席率不足の学生は

  本校は出席率80%以上が期末試験の受験資格となっています。出席率が低かった学生は受験資格を得るため担当教員の指導を受けてください。

日本学生支援機構奨学金
継続願・適格認定説明会

  1月17日(火)14:40より、7番教室にて卒業年次以外の奨学生全員を対象に説明会を行います。都合により参加できない学生は、説明会開始前までに事務局学務課に申し出てください。
  この説明会に参加せず、継続願を提出しない学生は、新年度4月からの奨学金は貸与されません。

石館とみ奨学金審査会

  3月9日(木)石館奨学金選考審査会を行います。この日の審査の対象となる学生は、3月6日(月)の教授会において奨学生候補生に選ばれ選考審査会へ推薦された学生です。候補生となった学生には、3月6日(月)夕方、本人へ通知しますので、学校が指定した日時に登校し、選考審査会と準備について、事務局で説明を受けてください。この説明会と選考審査会には学生本人が出席しなければなりません。

パスポートの取得について

  今年、留学実習に参加する、あるいはJT奨学金短期インターンシップ等を希望し、ロシアへの渡航が予想される学生で、現在パスポートをもっていない人は、3月~4月の春休み中には必ず申請してパスポートを取得しておいてください。なお、ロシアへの渡航には、パスポートの有効期限は、申請するビザの出国期限より6ヶ月以上必要です。渡航前に有効期限をしっかりとチェックし、必要な場合は更新しておきましょう。

お知らせ

第19回はこだてロシアまつり

  2月11日(土・祝)11時~15時に開催します。まつりのテーマは「ウラジオストクの冬の春」です。
  まつりは、極東大函館校オリジナル版のマースレニッツァから始まります。寸劇や学生が歌う歌で賑やかに盛りあがり、寒く暗い冬に別れを告げる儀式として、冬の象徴であるモレーナ(体長2メートルのわら人形)に火を放ちます。
  屋内会場では、恒例のロシアのかわいい雑貨販売、民族衣装試着体験、はじめてのロシア語教室や、チェス体験、学生コーラスグループ「コール八幡坂」によるステージショーや学生発表、そして今年は山口ミルコ氏による講演会も予定されています。詳細は下記をご覧ください。
  そのほか好評のロシアカフェでは、マースレニッツァには欠かせないロシア風クレープ「ブリヌィ」などをお出しする予定です(※チケット販売は11時30分より)。
  ぜひ、みなさんお揃いでお越しください。
  なお、当日は駐車場が使用できませんので、公共交通(市電・バス)をご利用ください。

山口ミルコ氏講演会

「がん闘病→がん克服→再出発ロシアへの旅」

日時:2月11日(土・祝)
14:00~15:00
会場:3階 講堂(入場無料・申込不要)
*角川書店、幻冬舎で編集者として活躍した山口さんの講演会です。当日は書籍の販売と講演会終了後にサイン会を実施します。

卒業証書授与式等案内

平成28年度第22回卒業証書授与式は、次の通り挙行します。

卒業証書授与式

日時:3月11日(土)午前10時
場所:本校3階講堂

卒業式リハーサル
卒業式前日の10日(金)10時より講堂で行います。卒業予定者と送辞担当者は必ず出席してください。

自治会主催 卒業生を送る会
11日(土)卒業式後、引き続き講堂で開催します。

同窓会パーティー
11日(土)18:00より市内ホテルにて開催します。

※卒業式、自治会送別会、同窓会パーティーは、学生全員参加となっています。
 各行事についての詳細は、掲示してお知らせしますので各々確認してください。

短信

第9回 АБВГ—Day

  11月9日(水)ロシア語学習促進と発表の場としての言語まつりАБВГ‐Day(アー・ベー・ヴェー・ゲー・デー)が開催され、函館校の学生のほかに留学中のロシア人学生4名が参加しました。
  個人発表部門では、学生たちが日ごろ学習している言語(日本人学生はロシア語、ロシア人学生は日本語)で3分~5分ほど発表を行いました。形式は自由です。各々趣向を凝らした発表で、学習の成果を競いました。
  チーム対抗部門では4つの混合チームに分かれてゲーム形式で言語知識を競い合いました。
  終了後は、審査結果発表と表彰式がおこなわれ、「個人発表部門」上位入賞者、「チーム対抗部門」優勝チームには、それぞれ賞状と賞品が贈られました。
  個人発表の部で1位に輝いたロシア地域学科1年の工藤さんで、ロシア領事賞も同時に受賞しました。
  結果は以下のとおりです。

第1位 ロシア地域学科1年  工藤さん
暗唱 プーシキン作「冬の朝」
第2位 ロシア語科2年    宮川さん
発表「星の王子様の背景と読解」
第3位 ロシア地域学科2年  齋藤さん
発表「キセーリの作り方」
芸術賞 ロシア地域学科4年  三好さん
歌唱「Гимн демократической молодёжи(青年民主の歌)」

2017オリジナルカレンダー販売中

  本校では、このたび初めて、オリジナルカレンダーを作成しました。
  極東大学本学があるウラジオストク、歴史ある街並みが美しい古都サンクトペテルブルク、活気あふれる首都モスクワの三都市を、職員が撮影した写真で紹介しています。
  月や曜日にはロシア語も配し、さらにロシアの祝祭日も加えてありますので、ロシア語学習にも役立ちます。
  このカレンダーは来る2月11日(土・祝)開催の「第19回はこだてロシアまつり」にて、1部500円で販売するほか、それ以前でもご希望の方には本校事務局で販売しておりますのでどうぞご利用ください。販売収益は「第19回はこだてロシアまつり実行委員会」に繰り入れ、学生の活動に役立てます。
  詳細はホームページ http://www.fesu.ac.jp/をご覧ください。

販売価格1部500円
郵送ご希望の場合1部600円
(送料込み)

日本ロシア文学会全国大会に参加して
本校准教授 スレイメノヴァ・アイーダ

  10月22日・23日に行われた第66回日本ロシア文学会の全国大会に出席しました。全国からロシア文学の研究者が集まり、現代ロシア文学・ロシア語に関する情報を交換した場所は、札幌市にある北海道大学のキャンパスでした。秋のポプラ並木、急いでいる学生と教員、涼しい風がこの学会の風景になっていましたが、会場では非常に熱い論議がありました。
  最近のロシア文学研究者は、文学のテキストそのものの研究や、教材として使われている作品の検討だけではなく、文学と絵画、文学と映画・漫画・アニメ、文学とインターネット・SNSなどを含めた研究を行っています。この学会でも発表のテーマは文学テキストから映画・アニメまでとしており、時代的には、ロシアの古代から現代文学が対象でした。どのパネルディスカッションあるいは個人の発表に参加するのか選ぶことは、かなり難しかったと言うべきです。そして、このような大きな学会では4会場もあり、同時に行われていた発表には出席できませんでしたが、いくつかの面白くて新しい情報について紹介させていただきたいと思います。
  私は、「実用ロシア語会話」の授業や「通訳翻訳の演習」の授業を函館校で教えるために、言語学・ロシア語の教え方に関係している発表を選んで聞きました。例えば、筑波大学の加藤百合とアビカヤ・オレーシャによる «Ошибки японцев в речи на русском языке» (「ロシア語の文章語における日本人学習者の誤り」)、「ロシア語における関係節の統語構造:束縛現象からの考察」(東京外国語大学 宮内拓也)、「ロシア語統語研究のためのイントネーションの上昇・下降のモデル化」(東京大学大学院人文社会系研究科 世利彰規)、「ロシア語の性に関するいわゆる意味的一致における素性のあり方をめぐって」(東京外国語大学大学院 光井明日香)などの発表には、様々な情報が授業でも役に立つと感じました。もちろん、ロシア語統語研究などのことまでは、すぐには手を伸ばすことはできませんが、配布資料の中には、函館校の学生の学年論文や卒業論文にも使えると考えています。
  「ロシア文学史」の授業を教えるために、「『エヴゲーニ・オネギン』における «Судьба» 及びその類義語の日本語訳について」(福安佳子)、「露日語の訳出行為におけるシフトの分析 ―Павел Санаев著 «Похороните меня за плинтусом» の翻訳実績報告)」などの発表や現代文学に関するパネルで配られた全ての資料を授業で役立てたいと思っていますが、資料の中には(特に「運命」、「生命」に関する資料)、通訳・翻訳の授業でも役に立つと思っています。
  年明けの授業で教えたいと考えている課題に関連するのは、例えば、「F.M.ドストエフスキー『罪と罰』のエピローグにおける語り手の問題」(田中沙季)、「「大審問官」と『カラマーゾフの兄弟』における構成と構成要素」(樋口稲子)、「ドストエフスキーの作品における若いニヒリストたちの精神的導き手について」(斎須直人)、「ミメーシスとブーニンの作品(1910年代)における物語の作法」(田子貞子)などの発表を聴きました。すべての発表が興味深く、函館校の学生も教員も、授業の題材だけではなく、次年度の学年論文用の資料としても使えるのではないかと思っています。
  19世紀文学(特に、ドストエフスキーの作品)を中心とした発表のテーマから、日本文学の研究者がどのようにロシア文学を見ているかも理解できました。
  現代文学の新しい考え方についても、この学会での発表や専門家との意見交換の場で知ることができました。例えば、北海道大学のスラブ・ユーラシア研究センターの望月哲夫教授の司会で行われたパネル(「触る、見る、聞く:新文学への新アプローチ(マカーニン、プオーゴフ、アレクシヴィッチの作品を例に)(«Трогать, видеть, слушать,: новые подходы к новой литературе (на примере Маканина, Пригова, Алексиевич»)では、現代ロシア文学研究者にとり、重要な意見とコメントを聴くことができました。
  現代作家は読者の反応を考えながら作品を作り上げ、日本で人気の高いドストエフスキーなどは、作家は既に亡くなっているものの作品は今なお生きており、研究者は作家のテキスト(文章)から解釈するだけでなく、マンガやアニメなど様々な媒体に描かれた作品からも解釈し、研究を続けています。
  ちなみにロシアでは、文学研究者は文学作品のテキストのみを研究対象としているため、私が与謝野晶子の『みだれ髪』のマンガを題材として解釈し、研究発表した時は、「それは正しい研究方法ではない」、と批難的な意見を述べる研究者もいました。
  私見ですが、ロシア文学は文学と言いながらも、日本ではもはや文学の域を出た存在となっているのではないかと思います。

(敬称略)