学報 "МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

学報"МИЛЛИОН ЗВЕЗД"

No.62 2010.1 "Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

調子どう、ロシア?/ロシア極東連邦総合大学函館校講師デルカーチ・フョードル

今書いている原稿は、年明けに掲載されることになるので、どうやら2009年にあった出来事を振り返り書くしかないようだ。実際それらの出来事はあまり新年にもって行きたくないようなものが多いが、なかなか忘れにくいものもある(まあ、いいニュースもあったけど)。

 2009年といえば、まず頭に浮かぶものはКРИЗИС(クライシス)…。
 昨年はロシアにとって人工災害の1年となった。ロシア非常事態対策省は3年も前に、不正の予算形成による人工災害の危険が高いと警告していたのだが。
 8月17日には、サヤノシュシェンスカヤダムの発電機が大爆発を起こした。元々、サヤノシュシェンスカヤ発電所はロシアで最大出力(全国の水力発電の15%)を誇るものだったが、今は停止し、修復作業には最低でも100億ルーブルの費用と3年の時間がかかるといわれている。
 11月27日、モスクワ・ペテルブルグ鉄道の高速列車(時速200km)の「ネフスキー・エクスプレス号」で爆破テロ事件があった。ロシアではテロ事件はこれが初めてではないが、ある事情によってそれは更に重大な事件とされた。実は、事件の少し前に、列車内のロシア産のステンレス製シートは、より軽いドイツ産のアルミ製シートに交換されていた。爆破時、列車は急停止したため、アルミの骨組みが壊れて車内を飛び、その結果、29人もの死者と多くの重傷者を出した。幸い、緊急救助隊は直ちに来たし、乗客もパニックを起こさず、無事な人は救助作業に参加した。その後、アルミ製シートの使用も禁止された。また、12月18日には、同じモスクワ・ペテルブルグ鉄道で新高速列車「サプサン号」の運行が始まった(時速250km、ドイツのSIEMENS製)。片道は約3時間かかり、一番安いチケットで2,165ルーブルするという。ところで、その路線のレールを作ったのは(株)日本製鋼所だった。近い内に同じ列車のニジニー・ノヴゴロド便の運行も期待されている。

 そして、もっとも悲しい日は、12月5日だった。ペルミ市にあるナイトクラブの火災で152人が帰らぬ人となった。火災の原因はなんと、壁と天井被覆材がプラスチックのホールで花火を使用したためという。おまけに消防車と救急車が火災現場に到着するのが大幅に遅れ、せっかく外へ逃げ出して救われたはずの負傷者の多くが、凍死してしまった…。これで国民は強い不満を覚えたのは言うまでもない。この火災のことが放送された直後、献血をする人が無数に現れ、ペルミ市内の病院にあるドナー血液の容器が一杯になって、病院が受付を停止した位だった(まあ、政府に期待できないといっても、幸いこの世の中にまだいい人がたくさんいるね)。アメリカのホイットニー・ヒューストンは、12月9日のモスクワライブで「I Look To You」をペルミ火災の犠牲者に捧げ、また、ロシア各地の整形外科からは「無料で手術をする」という声もあがった。

  経済について言えば、近年のオイルマネーによる余裕があったにもかかわらず、全体の低下はあまりに大きくて黒字を保つことは出来なかった(GDP低下8%)。重工業はある程度は動いているが、新型の車両や乗客航空機の生産率はきわめて低い。唯一の成功プロジェクトといわれる中距離航空機「SUKHOI・SSJ100」はあるが、また調達期限に間に合わないという(2010年夏に販売開始を約束)。政府から「生産を近代化し、海外から最先端技術も購入する」という約束が聞こえてはいるが、実際には結果が中々見られない。乗用車を生産するAUTOVAZ社は、売上低下35%で、どうやら断末魔状態のようだ。270億ルーブルのクレジットを受けても、生産ラインが停止され、労働者には給料も払われない。軽工業(衣類など)は、もう少し良い傾向が見られるが、それは外国会社の工場が近年数多く建設されたからだろう。
福祉部門への予算割当てや年金などが段々上がっているが、それにつれて物価も上がってきた。政府によるプログラム「Материнский капитал(母子資本:二人目以降の子供が生まれると国から25万ルーブル貰える)」も順調に行われ、出産率増加が確実に見られる(それは良かったね)。

 スポーツについて触れよう。まず、サッカー…。噂によれば、伝説のトレーナーであるオランダのフース・ヒディンクは、ロシア代表チームをヨーロッパ杯で過去最高位の3位にまで導いたのだが、今年で契約期間が終わるのでロシアを後にするだろう(選手はみんな反対するけど)。…ロシア人は数十年もの間“全国サッカーマニア”でサッカー人気は非常に高い。なのにロシア代表チームの戦績は長い間低迷を続け、上にあがって行けなかった。
 アイスホッケーは悪くない。ヨーロッパ選手権の枠組みでモスクワで行われた「チャネル1カップ」で2位(1位はフィンランド。さすが北の国)。
 フィギュアスケートのエフゲニイー・プリュシェンコは2007年の膝の怪我と手術の後、公式に復帰し、全ロシア選手権で8回目の優勝を果たした。
 また、アメリカスポーツアカデミーと全米記者協会によるランキングで、ロシアの棒高跳び選手エレーナ・イシンバエワが「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた(2009年世界新記録は、5.06m)。

  教育に関して、昨年話題になったのは、いわゆる「ЕГЭ制度」だ。それは2001年から一部の学校に導入された、「Единый государственный экзамен=共通国家試験」のことだが、2009年には全国の学校に義務付けられた(今は国語と数学のみ)。高校を卒業する生徒がЕГЭを受けると、自動的に大学入試として認められるという制度で、落ちたら、勿論、大学に入れないわけだ。
 元々、この制度の目的は、大学における汚職をなくすることと、首都圏と地方の生徒に平等のチャンスを与えることにあった。しかし、ここで新制度の弱点も見えてきた。まず、汚職はこれだけでなくなるわけではない。そしてЕГЭに使われる西洋的なテスト制度(正解を当てる方法)は、実績率を上げるかもしれないが、人の独立思考能力を低下させる。だから、学生も両親も反対する人が多いし、一部の大学はЕГЭ制度を信頼せず、入試を昔なりに行っている。確かにЕГЭの結果を見ると驚く時もある。例えば、昨年の全国結果によれば、ロシアで最高の国語平均評価を誇る地方は…、コーカサス地域のダゲスタン共和国。コーカサスは伝統的に汚職の多い地域であり、しかもそこの人民にとってロシア語は母語ではないので、この評価はどう見ても怪しいのだ。しかし、まあ、いい変化もないわけではない。例えば、ペテルブルグ等の国語平均評価は段々高まっている。つまり、生徒は試験の準備をもっとしっかりするようになった(いずれにしても、試験って怖いものだから)。そのせいか、最近のロシアで共通語になった言葉は「БАБА ЕГЭ」だ(バーバー・ヤガーの妹さんかな)。

  文化・芸術について言えば、昨年、ロシアで行われた最大の文化イベントは、間違いなく「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2009」だ。モスクワでは初開催となった第54回目の「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」には、ヨーロッパの42カ国が参加した。この音楽コンテストは日本ではまだあまり知られていないが、ヨーロッパで1956年から毎年1回開催されていて、毎回、大変注目を集める大人気の国際ポップシンガーコンテストだ。テレビ、ラジオ、インターネットでも中継され、これに出場して入賞すれば世界的な活躍の足がかりともなる。例えば、有名なt.A.T.u. (タトゥ)の世界的人気は「ユーロビジョン2003」での3位入賞から始まった。

  さて、昨年5月にモスクワ開催された「ユーロビジョン2009」の特徴は、過去最高額の費用(約40億円)と優れた会場デザインだった。この決勝公演の模様は、ヨーロッパで1億2千5百万人が見たという。優勝したのはベラルーシ系スウェーデン人のАлександр РЫБАК(アレクサンドル・リバック/Alexander Rybak)が英語で歌った曲「FairyTale」だった。「ベラルーシ系」ということで、勿論多くのロシア人にとっては自国が優勝したように嬉しかっただろう。
 ちなみに彼は12月31日公開の話題のロシアSFX映画「Чёрная Молния」のテーマソングを歌っているので(当然、ロシア語で)、興味があればそちらも聞いてみてはいかがだろうか。
 映画といえば、最近ロシアで話題になった映画「АДМИРАЛЪ」は、「提督の戦艦」という日本語版でDVDレンタルに出されている。元々はテレビドラマ(10回)の劇場版で、内容はA・コルチャーク提督の生涯だ。革命後のロシアで赤軍と戦ったコルチャーク提督は、シベリアのオムスク市に首都を置いて「ロシアの君主」となった人だ。歴史の面では、この映画はコルチャークという人物をあまりにロマンチックに見せていると思うが、映画全体としては面白かった。特に第1次世界大戦時代に興味のある人は、海戦の場面は絶対見る価値がある。
 昨年のロシアはこのような1年だった。今年、皆様にはよいお年を。

PS:終わりに、FBDランキングによる、「アネクドート(ロシアの小話)・オブ・ザ・イヤー」をどうぞ。

世界考古学シンポジュームにて、研究者が講演をしている。
○ドイツ人:我々は、地下20メートルのところで銅を発見したので、千年前のゲルマニアには、既に電話回線があったのではないかと考えられます。
○イギリス人:我々は、地下30メートルのところでガラスを発見したので、千年前のイングランドには既に、光ファイバーがあったのではないかと考えられます。
○ロシア人:我々は、地下50メートルも100メートルも掘ってみたが、全く何も見つけていない。ということで、古代ロシア人は、衛星放送を利用していたとしか考えられないでしょう。

学生からの投稿

留学の感想 ロシア語科2年 松山 泰慶

まずはじめに、3ヶ月はあっという間だった。正直な気持ちで言うともっと長くいたかった。
 はじめの1ヶ月目は初体験の寮生活、初ウラジオストクで、何もかもが新鮮で、何もわからず一瞬で過ぎた。2ヶ月目はこの街、この国、ロシア人を大嫌いになり長く感じた1ヶ月だった。そして3ヶ月目、あまり深く考えなくなったら案外楽しいってことに気づいた一ヶ月。
 9月はまだ暑く、Tシャツで外が歩け、風も心地よかった。クラス分けの発表当日、どんなクラスに入るのか見当もつかず初授業、クラスメイトは私、柴田さん、同じく一緒に入った日本語もできる韓国人、一番仲良くなったフランス人、6ヶ国語(日本語も)を自在に操るオーストラリア人、同じ大学から来た韓国人2人、授業をサボりまくる中国人、某大学教授の日本人の計9人。みんなロシア語が自分よりうまかった。彼らをみてすぐ思ったことは、会話力が想像以上にすごい!!入るクラスを間違えたんじゃ?!会話力でいえば日本人は最下位だ。
 みんな、母国語のように会話してビックリして圧倒されたけど、逆に良い刺激になった。だからロシア人の友達をつくり、3ヶ月間積極的に会話をするように心がけた。
 宿題が多く夜遅くまで終わらなかったときもあった・・・。他にも断水したり、ボヤ騒ぎがあったり、停電したり、かなり貴重な体験が出来た。
 10月は秋って感じで少し肌寒く好きな季節だ。授業も一応追いつけ、余裕が出てきた。すると不快に思うようになることがあった。
 ロシア人のアジア人をみたら知り合いでもないくせにすぐに「ニーハオ」とバカにしながら言う癖だ。完全無視を貫いた。店員には国籍当てゲームをされた。中国から始まり、最後はウクライナ人?とまで言われた。何故、日本車が溢れるこの街で「日本」が出てこなかったのかは今でも謎だ。灯台もと暗しというのは本当だ。こんなこともあり全てが嫌になった。
 そして、この月のハロウィンの日、一気に冬になった。大雪だ。24時間降り続けたであろう雪で街の景色を大きく変えた。散歩してると、ふと、ここはスキーリゾートかとも思えた。みんなの思い描く「ロシアらしさ」があった。
 11月は、毎日−1℃から−15℃の世界の凍えた月だった。でもこの月が一番楽しかった。いろんな友達が出来、遊んだり、パーティーに招待してもらったり。寒いから出不精になるかと思いきや、よく出かけた。気がつけばはじめすごいインターナショナルだったクラスが最後には日本人2人、韓国人1人、中国人5人のありがちなクラスに変わっていた。
 最後帰る日にクラスメイトが覚えてくれた日本語の「さようなら」と言われたとき、改めてもっといたいと思った。ロシア人や日本人の友達が寮の前まで授業を休んでまで見送りに来てくれ、号泣した。久しぶりの号泣だった。
 毎回海外に行くと思うのだけれど今回はいつも以上に特に得るものが多く、また成長できたのかな、と思う。

ロシア料理レシピ

本校では、ロシアまつりなど様々な行事を通してロシア料理を紹介していますが、今号から、簡単なロシア料理のレシピを紙上でも紹介していきます(不定期に掲載します)。1回目はボルシチです。ボルシチは地域や家庭ごとに作り方に特徴があります。今回はアニケーエフ先生のお宅の作り方です。

「アニケーエフ家風ボルシチ」

◇はじめに。
・肉が苦手な人は、肉のところを省いてつくり、味を整える時、ブイヨンを入れて下さい。
・ビーツの缶詰は大手食材店で購入できます。
・サワークリームは、無糖プレーンヨーグルトと動物性脂肪生クリームを1対1の割合で混ぜたものでも代用できます。

◇材料(4−5人分)
豚か牛のかたまり肉(できれば骨付き) 500g
ビーツ 2個(1個約150gとして),缶詰なら半缶(1缶約450gとして)
キャベツ 1/2個、じゃがいも 中2個
玉ねぎ 1/2個(細切り)
人参 1/2本(細切り)
赤パプリカ1個(細切り)
トマトペースト(又はケチャップ) 40g
サラダ油 大さじ1
酢 大さじ1
塩・こしょう・砂糖 各少々
ローリエ(月桂樹の葉)2〜3枚
ニンニク 1〜2片(つぶす)
パセリ 1束(みじん切り)
ブイヨン(コンソメ又は味の素) 適宜
サワー・クリーム(又はマヨネーズ) 適宜

◇作り方
(1).ビーツは皮をむき千切りにして、酢を少々振りかけ、数分間おいておく。
(2).鍋に8分目まで水をはって肉を入れて強火で煮立てる。煮立ってきたらアクをとり、塩小さじ1入れて、弱火にして煮つづける。
(3).サラダ油少々をフライパンに入れて熱し、(1)のビーツを焦がさないように弱火でよく炒め、トマトペーストを入れて煮る(ビーツの色を保つため)。さらに(2)の肉の煮汁(肉なしでつくる場合は水)を少量加えて、ビーツが柔らかくなるまで、さらに煮込む。
(4).サラダ油を熱したフライパンに玉ねぎを入れ中火で軽く炒める。ニンジンとパプリカを加え、玉ねぎが透き通るまでさらに炒める。
(5).ジャガイモは好みの切り方(8等分に切るか、くし型切りか、さいの目切り)をして、(2)の鍋に入れてゆでる。煮汁が煮立ったら、千切りなど好みに切ったキャベツを入れ5分ほど煮る。さらに(3)のビーツと(4)を入れ、全体をよく混ぜる。
(6).塩コショウ砂糖で味を整える(肉入りでつくる場合も、ここでブイヨンを入れてもよい)。
(7).ローリエを入れる。ここでつぶしたニンニクを入れてもよい。火を止めて10分程寝かせる(炒めたビーツの酸味とトマトの酸味がボルシチの味を引き締めるまで)。
(8).スープ皿に盛りつけ、サワークリームを好みで上にかけ、パセリのみじん切りを散らす。肉を鍋から取り出し、一口大に切って2〜3枚皿に添えてもよい。